うこん桜の香り
「この絵を描いた先生の作品でしたら他にもございますが」
百合は他の絵を見る気はしなかった。しかし涼んでいきたい気持で、店内を眺めた。波子に似ている絵は見れば見るほど欲しくなった。下着にしみ込んだ汗が冷えて冷たさを感じ始めた。
「どうぞ」
テーブルにホットコーヒーが用意されていた。
「いただきます」
百合はコーヒーを口に運んだ。
「名刺か何か頂けますか?」
「どうしてかしら・・」
「気が変って、お売りするならお客様にと思いまして」
「ぜひ、お願いしますわ」
百合は住所と電話番号を書いた。
画廊を出て少し歩いただけで汗が出た。
ケーキを買い、花を買いながら寺に向かった。
逆さ川のほとりを歩いた。