うこん桜の香り
洋菓子店に向かうと、画廊が目に入った。少女の絵が見えた。
どこか波子に似ている気がした。立ち止まり中を見た。
「どうぞ中でご覧になってください」
店番の男がドアを開けた。
「すみませんこの絵はいかほどでしょうか」
百合はドア越しに尋ねた。
「どうぞ中は涼しいですから」
「ありがとうございます」
店に入れば絵を勧められることは覚悟していた。
「こちらの絵は非売品でして、お売りできません」
「残念ですわ」
「この絵は私がこの店を開店した時、初めて仕入れた記念の絵ですので申し訳ございません」
「とても娘に似ているので・・・」
「それでしたら肖像画の先生を御紹介いたしましょうか」
「この絵が欲しいのですから、結構です」