うこん桜の香り
鬼畜の涙
波子は久しぶりに海を見た。生まれて5度目くらいである。
船から見る海は初めてであった。航跡の白い波が綺麗でいくら見ていても飽きないのだ。
風も今までの風ではない、潮の香りを運んでいる。
両津の港に着くと、佐渡おけさの出迎えがあった。
波子は佐渡に来たのだと改めて感じた。
バスに乗り、予約してある宿に向かった。
その頃、稔は船に乗っていた。波子の予定より少しずらして船を選んだ。
稔は景色を見るゆとりは無かった。波子を自分の女にすることだけを考えていたのである。それが今まで育ててきた波子の自分に対する態度への復讐なのだ。結果、百合に対しても復習になる。
波子は宿の主人の案内で、夜の佐渡おけさを見に行った。
「私はこれで失礼します。すぐに覚えますから少し踊るといい記念になりますよ」
波子は踊りの輪に入った。