うこん桜の香り
「すみません」
「珍しいですね、このさくらはこの街には多分ここだけですよ」
「どんな花なんです」
「八重です。色は白に淡い緑がすこし入っている感じです」
そのさくらは校庭の隅にあった。
「4月半ばに咲きます、今はただの桜の木ですよ」
「ありがとうございます。少しここに居ても宜しいでしょうか。スケッチをしたいのですが」
「許可を取ったのですからどうぞ」
教師は帰って行った。
百合はゆっくりと、うこん桜を観察した。
すると幹の一部が躯になっていた。根元の方である。
中を覗いた。瓶がある。誰かがいたずらで入れたのであろうが、取りだしておこうと思った。
コーヒーの瓶であった。中に何か紙が入っている。