うこん桜の香り
少し歩くと公園があった。
西山はキャンバスを太陽に向けた。
「この絵は下に何か書いてありますよ」
「何がです」
「上に描いた絵の具を取り除かないと解りませんね」
「出来るのですか、そんなこと」
「私のアトリエに戻ればできます」
「お願いします」
タクシーを見つけ、西山のアトリエに向かった。
西山の作業から浮かんできたのは、桜の花であった。
それも珍しい、うこん桜であった。
その根元にサインとも暗号ともとれる「愛」の文字が記されていた。
うこん桜であると解ったのは西山である。さすがに画家であると百合は感心した。
「ぼくが余計なこと言いだしたから、こんな探偵ごっこになって、責任ありますから手伝います」