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海野ごはん
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7月7日 銀河の恋の物語

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「最近は恋愛してないの?娘さんも離れて一人なんでしょ」彼女がスリングを飲みながら聞いてきた。
「してない・・・だから、今日なんかどきどきしてる。君は?」
「私は真面目な主婦だもん・・・とりあえず昨日まではね・・へへへ・・・」
「今どきの主婦も凄いんだろ?」
「人によりけりじゃないの・・・お望み?」
「いや、そういうつもりで言ったわけじゃないんだけど、ごめん気を悪くした?」
「ううん、人っていろんなタイプがあるからいいんじゃない。私だってどっかいい男いたら私を連れてってぇ~となるもん」
「旦那は?」
「旦那は旦那・・・空気みたいなもの。いや、どっちかというと面倒くさいかな。どうしてこの人の世話ばっかりしなくちゃいけないのって思う時あるもん」
「それは男の台詞だ。女房は空気みたいなものってみんな言ってる」
「あら、女同士だって言うわよ。それ以上も言ってるんだから・・・」
「ひぇ~、怖いな」
「だけど、女は冒険できないのよね・・・夢見るだけ・・・」
彼女はまた一口スリングを飲むと、ロンググラスの中の氷をカラカラまわした。

「じゃ、今夜はその夢のお手伝いをしてあげましょうかね」
「どんな夢かわかるの?」
「いや、知らないほうがいいかな・・・」
「知りたいでしょ・・・」
「・・・・・う~~ん、聞かない」
「どうして?」
「思い通りに叶う夢は大して面白くない。むしろ思い通りにならないのが、突然思い通りになったというのが感動もひとしおだ。だから聞かない。偶然君の夢に付き合ってられたらそれはそれの方がいいだろ」
「・・・・夢のお手伝いは?」
「するさ。いい女だし」
「・・・じゃ、さっき言ったロマンチックして!」
彼女はくるっと僕の顔を見ると、笑いながら言ってきた。
まいったなぁ~・・・だから、そんな風に来られたら出来ないって・・・・。
頭を掻き掻き、僕は彼女の顔を見てにやけるしかなかった。

ジャズのステージが終わり、女性シンガーはまばらな客に挨拶して一段上がったステージから降りてきた。後ろからドラムとベースの中年男性が降りてきた。ミュージシャンは奥のカウンターで集まりお酒を飲み始めていた。年代は同じくらいだろうか、かしこまらないフランクの感じがよかった。
僕は彼女を席に置いたまま「お代わり注文してくる」と言ってカウンターに向かった。マスターらしき人物が先程歌っていた女性と話している。僕はそばに歩んでいった。

「あの~すいません。実は今日あったばかりの女性に告白したいんですが、リクエストしてもいいですか」
マスターとシンガーの女性は興味を示してくれた。
「今日あったばかりで告白?いいねぇ~」マスターは笑った。
「私そういうの大好き。なんでも歌っちゃうから」
「すいません、いきなり。You Are So Beautifulってありますよね」
「あ~あれね、いい曲だ。じゃ僕がピアノ弾いてあげよう」マスターが言った。
「実を言うとマスターもうひとつお願いが・・・僕にあのサックスを」
僕はスピーカーの横に立てかけてあるサキソフォンを指差した。
「できるの?」
「その曲ぐらいなら・・・」
「またまたかっこいいとこ見せようなんて」マスターは笑った。
「すいません。厚かましいお願いで」
「いいって、いいって。それじゃちょっと打ち合わせしようかキーは・・・」

なんだか心臓がバクついてきた。
今まで友人同士でセッションはしたことあるが、東京の見知らぬ所でプレイするのは度胸がいった。これも、あの彼女を喜ばそうとするサービス精神のおかげか。
まあ、いろんな経験こそが自分の宝物だ。僕は覚悟を決めた。お客さんも10人ほどだし恥ぐらいかいたっていい。
ミュージシャンの中年達はニヤニヤしながら集まり、メンバーを決めだした。