小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
海野ごはん
海野ごはん
novelistID. 29750
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

7月7日 銀河の恋の物語

INDEX|5ページ/7ページ|

次のページ前のページ
 


「六本木にJAZZボーカルの店がある。雰囲気もいいみたい。行ってみる?」
「お好きなところに連れてって」
「酔った?」
「ううん、まだまだ。お酒は強いのよ」
「僕も女には弱いがお酒には強い。酔いどれの七夕になりそうだな」
「一年に一度の逢瀬でしょ。楽しくやらなくっちゃ」
浴衣姿でにぎわう東京タワーの展望台を後にすると、僕達はタクシーに乗るほどでもない距離にある六本木のバーを目指して夜の街を二人並んで歩き出した。
飯倉の交差点を過ぎ、外苑東通りに入りロシア大使館の前を抜け麻布郵便局を通り過ぎ、首都高速の下を抜け、六本木5丁目に着いた。街の明かりがまだまだ明るい歩道を二人どちからともなく手をつなぎデートのように楽しんで歩いた。

「なんだか恋人同士みたいだね」僕の心も弾んでいた。
「彦星様と織姫様でしょ、私達」
「そうだったね。一年に一回のデートは楽しくしなくっちゃ」僕は夜空の星を見た。
街の明かりで星はなんにも見えなかった。
この地球の外での星の姿に、昔の人はどこへも行けず、せめて思いだけでもと遠くに思いを馳せた時代があったのだろう。だけど、今では飛行機で会いたい場所に飛んでいける。
もしも願いが叶うならと、今では僕達、メールやネットで出会い、気の合う人を見つけあい、そして実際こうやって昨日までは会わなかった者同士が今は手をつないでいる。
ちょっとネットに感謝と思いながら僕は口元を緩め都会の歩道を歩いた。


JAZZバーはビルの2階にあり、店内は暗い照明でグラスの手元が見えるかぐらいだった。小さなステージでは体格のいい40代の女性がスタンダードジャズを歌っていた。時折、日本のPOPバラードをジャズ風にアレンジして歌ってみたりと割と聞きやすいカジュアルなJAZZバーだった。
僕はIWハーパーをダブルで、彼女はシンガポールスリングを飲んでいた。
「ねえ、今日最初に会ったあのお店・・・あそこでどんな出来事があった?」
「どうして?」
「ほら、もててた頃の待ち合わせ場所だったって言ってたじゃない」
「う~~ん・・・泣いたこともあったわよ」
「昔の青春がいっぱい詰まってるんだ?」
「そうかもね・・・久しぶりに行ったらなんだかずいぶん変わってて昔の面影なんかなかった。やっぱりtime goes byなのね」

「・・・・ほんと、あっと言う間だよね。30年前に戻りたいって感じ」
「あの頃出会ってたら、私達仲良くしてたかしら?」
「さあ、どうだろうね。今だから話し合えるってのもある。好みも昔と変わってきているし・・・」
「どんな子が好きだったの?」
「かわいこぶりっこ、超美人!」
「え~~、本当。今は違うの?」
「うん、美人じゃなくてもいい。話が合ってやさしければいい」
「それって、私が美人でなく話しやすいからってこと?」
「ちがう、ちがう。君は超美人。今だって一緒にいることで鼻が高い」
お世辞半分でも本当に彼女は美人だと思った。40を過ぎて誰でも少しの皺は増える。特に目の辺りは隠せはしない。しかし、そんな見かけよりもどんな人生を過ごし、どんな風に生きてきたかが興味がある。生き様は喋り方でわかる。そして交わす言葉の内容がしっくりくれば僕にとって、たぶん彼女にとっても横にいる存在に値するのだ。
価値観の違いもあるだろうけど、とりあえず話をしてて楽しいこと。それこそが一緒にそばにいる理由だ。彼女は僕にとって初対面であるけど凄く居心地がよかった。