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海野ごはん
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7月7日 銀河の恋の物語

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「どうだった。あのホテル?」彼女が予約してくれたホテルの事を聞いてきた。
「知り合い?シングルなのにダブルの部屋をくれたから、ゆっくり寝れた。ありがとう」
「それはよかったわ。あそこから近いの娘の部屋」
「へぇ~、スカイツリーが見えるね、あの街。もう登った?」
「ううん、まだ」
「七夕だから、天の川に近いところまで登ってみる?」
「私もそう思ったんだけど7月10日までは完全予約制でチケットが手に入らないみたい」
「へぇ~、調べてくれてたんだ。一緒に登ろうと思ってくれたの?」
「へへ、残念。娘と行こうかと思ったんだけど・・・」
「なんだ、僕と見たかったんじゃないんだ」
「高いところ好きなの?」
「猫と煙は高いところに登りたがる。猫の性格なんだ僕」
「そう?ドラ猫?」
「ううん、泥棒猫」
「いやだぁ~、それって私をどうかするつもりぃ~?」
「それもいいな、ハハハ」
一瞬、今夜のことが頭に浮かんだ。
「じゃ、東京タワーに行こうか」僕が言った。
「なんだかおのぼりさんみたいね。でも、いいわね。実は行った事がないの」
「僕も。やってるのかな?」
「ちょっと待って・・・」スマホで彼女は調べてみた。長い指で画面を操作する仕草が女らしい。ネイルアートも今日の為なんだろうか。そうだったら彼女もずいぶん気合を入れてきたんだなと思った。
「あいてるって。最上階の特別展望台は9時まで入場すればいいって。今何時?」
「8時を過ぎたところ。あっという間に時間は過ぎるね。行ってみようか」
「うん!」
僕らは勘定を済まし路上で客待ちしているタクシーを捕まえて「東京タワーまで」と告げた。銀座から東京タワーの下まではそんなに時間がかからなかった。
「あれ、電気消えてるね。節電?」
「さっき調べたけど今夜は七夕で消灯してるんだって」
「へぇ~、みんなで夜空を見るためかな」
タクシーを降りると浴衣姿の若い子がたくさんいた。チケット売り場に行くと「浴衣姿の方は無料」と書いてあった。
「なんだ、浴衣で来れば良かったね。でも無理か」彼女の方を向いて僕は言った。
「浴衣なんてあなたも着るの?」
「いや、着ない。ずっと着た事ない」
「私は着るわよ。色っぽいんだから・・・」
「じゃ、次回、拝ませてもらおうかな」
「いいわよ!」

チケット売り場の横の入り口を入るとすぐ正面に展望台へのエレベーターがあった。
七夕の日に同じように星を見る子達がたくさん並んでいた。
最上階の特別展望台まで上がる事にした。途中で降りて階段コースもあるのだが、そこまで若くはなかった。


丸い展望台は東京の隅々まで見渡せた。
「きれい~~~」彼女の顔が子供のような顔になる。
空の銀河は見えなかったが、眼下に星より綺麗な街の灯りがさんざめいていた。青い光、赤い光、白い光いくつもの色が重なり合い。クリスマスツリーの数倍は綺麗に輝いていた。
「ほら、あそこスカイツリー」結構ここからだと小さく見える。
浴衣姿の若い女の子に混じり、彼女は同じく目を輝かせていた。女性は光物に弱い・・・そうそうダイヤモンドよりも輝く街の灯りは、なによりのプレゼントだ。
「ねえ、どのダイヤモンドが欲しい?」僕が笑いながら言うと
「ダイヤモンドはいらない。綺麗な思い出がいい」
「綺麗な思い出?はて?」
「ロマンチックを頂戴!」
「・・・ロマンチック?そんなものあったっけ・・・」
「得意なんでしょ・・・」
僕はいつもメールで彼女に打ち出す言葉を思い出した。あれなんか、言葉のお遊びでいきなり目の前でロマンチック頂戴と言われても困る。それに、ロマンチックなんかすぐに「ホイッ」とあげられるもんじゃない。困った。

「困った?そんな顔してるわよ」と彼女が意地悪な微笑で、顔を緩ませていた。
「いきなり、慌てふためくね。わかった帰るまでのお題としとこう。ところで今夜は?」
彼女は展望台から見える夜景をバックに振り向き僕に言った。
「楽しく・・・!!」
「楽しく?・・・それから?」
「もっと楽しく・・・」フフフと笑い、くるりと振り返りガラスの向こうに広がる夜景を見た。

「よし、じゃ次はバーだ。ライブがあるバーに行こう」僕が言った。
「どこか知ってる?」
「好きなジャンルはJAZZ?ブルース?ロック?演歌?」最後は冗談のように聞いた。
「カラオケで銀座の恋の物語は?」
「えっ?ほんと・・・・」
「嘘よっ!演歌は苦手なの」
「・・・・よかった。僕もなんだ。ちょっと待って調べてみる」
今度は僕がスマホでライブバーを探した。