7月7日 銀河の恋の物語
六日は梅雨空の間を縫って晴れ間が広がり、週末まではいいお天気が続くらしいと天気予報では言っていた。蒸し暑い中を軽トラをレンタカーで借りて可愛い娘のため僕はもくもくと引越しを手伝った。
「パパ、なんだか楽しそうね。いつもそんなに元気だったっけ」
「アア、お前がいなくてパパは独身を楽しんでる。なんだか若返った」
「彼女でも出来たの?」
「・・・まさか」
内心ドキッとした。明日の夜、どこかの奥さんと逢引きするんだなんて言えない。しかし、言えないというのはどこかにやましい気持ちを持ってるんだろうか。別に何かがあるわけじゃないのにと自己弁護をしながら荷物を運び出した。
ワンルームの部屋は運び出すのに2時間、入れ込むのに2時間、あっという間に終わった。我が娘の荷物の中に彼氏と写った写真立てを見つけた時には、少しムッとしたがすんなり終わった。
「よし、これで全部だな。終わった、終わった」
「どうする今からパパは?」
「ご飯でも食べて、知り合いに紹介してもらったホテルに今夜は泊まるさ」
「一緒に食べよう!」
「ああ、もちろん。いろんな事を話ししたいしな」
それから近くの中華料理店で娘から東京の友達の事を聞きながら一緒に食事をした。
「ねえ、パパ、再婚しないの?」
「どうだろうね・・・。縁がないと出来ないし。それに一人だって悪くない」
「彼女でも見つけなよ」
「余計なお世話だ。パパだってロマンスはある」明日の事が頭に浮かんだ。
「へぇ~、うまくいったらいいね」
「ませた口を利くな」僕は笑いながら一瞬写真立ての彼の事を聞こうかと思ったが止めた。恋愛は誰だっていくつも通り過ぎてゆく。今の彼氏が将来の旦那になるかもしれないが、それはずっと未来のことで先のことはわからない。
長く生きていると、男と女の出会い・タイミングは一期一会で、その瞬間しかないような気がする。そして縁。出会い別れていった人も何人かいた。いまさら将来の夢を誓い合って未来を築いて行こうなんて台詞は吐けないが、中年の恋もいいじゃないか。
人が人を好きになることはそんなに悪いことじゃない。恋愛推進派だ。不幸を作らない恋愛ならいくつしたっていい。捨てられて涙したって、それは恋愛したからこそ味わえる事であって、やがて涙は乾き、ちょっと傷ついた思い出もまた深夜の酒の肴にはちょうどいい。切ない夜も人間生きていたら感傷に浸り、快感になる時さえもある。
明日の彼女との銀河の恋物語はどうなるであろうかと、その晩は眠れずに過ごした。
作品名:7月7日 銀河の恋の物語 作家名:海野ごはん