【無幻真天楼 第二部・第一回・参】そして僕にできること
クロを足の間に抱いて縁側に座る制多迦
なんだかモヤモヤして落ち着かない
自分が矜羯羅にしたかったことを緊那羅がやった
ただそれだけなのになんだかモヤモヤしてあの場所にいたくなかった
「…はぁ…」
制多迦が大きくため息をつく
「あんれぇ…タカちゃんがため息とか珍しい」
聞こえた声に制多迦が顔をあげると目の前には3つの穴
よくよく見ればカンブリと書かれた埴輪の目と口だった
それが横にずれると阿修羅の顔があった
「…しゅら…」
「よっ」
制多迦の隣に腰かけた阿修羅にびっくりしたクロが庭に飛び降りるとタタタッと駆けていく
「なーに浮かない顔しとんきにタカちゃん。がらっちょと喧嘩でもしたんかい?」
阿修羅に聞かれた制多迦がうつむいて首を振った
「竜のかみさんに叱られたとか?」
質問を変えて聞いた阿修羅にまた制多迦は首を振る
「ならどうしたんきに…平和な顔がタカちゃんのチャームポイントなんになぁ…」
ポンポンと制多迦の頭を軽く叩きながら阿修羅が苦笑いした
「…ヤモヤする…緊那羅が矜羯羅の背中さすっただけなのに…僕もやりたかったなって思ったらなんか…モヤモヤ…って」
「緊那羅が?」
ボソボソと言った制多迦が膝を抱えた
「…ままでこんなことなかったのに…僕…」
「あ…あー…ああハイハイはっはっは」
阿修羅が笑いながら制多迦の頭をクシャクシャと撫でた
「タカちゃんそれヤキモチやんきに」
制多迦が阿修羅をきょとんとした顔で見る
「…キモチ…?」
「そっヤキモチ。タカちゃんは緊那羅にヤキモチやいたんよ」
「…くが緊那羅に?」
阿修羅が制多迦の頭から手を離して頷いた
「…キモチ…でもなんでだろ」
「…そりゃ…タカちゃんががらっちょ好きだからなんちゃうんか?」
「…んがらは好きだよ?でも今までずっと好きだけどこんなモヤモヤなかった」
「…そうけぇ…」
制多迦が頷いてため息をついた
「…んがらが咳したとき僕が背中さすりたかったなって…僕にもできたのにできなかった…僕にできるとこ見つけたのにできなかった」
「タカちゃん…」
「…んならいいなって思った…」
ぽっりと言った後制多迦がまた膝に顔をつける
そんな制多迦を見た阿修羅が顔を歪めた
作品名:【無幻真天楼 第二部・第一回・参】そして僕にできること 作家名:島原あゆむ