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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第二部・第一回・参】そして僕にできること

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矜羯羅が小さく咳をするのが聞こえた
気になって襖に手をかけかけてはそれを引っ込める制多迦
襖に寄りかかるとうつ向いて膝を抱た
風邪が移るから
と部屋から出されてから制多迦はずっとこうして部屋の前にいた
頭の上にいたクロがトンッと床に降りると心配そうに制多迦にすりよる
「…クロ…」
制多迦がクロを撫でた
「…く何にもできないんだ…」
悲しそうに微笑んだ制多迦
「…んなとき矜羯羅ならどうするかな…京助ならどうしてると思う?」
ふんふんと鼻を動かすクロ
「…れかのために自分ができること何かするって難しいね…やりたいことはあるのにそれをしたらきっと矜羯羅嫌がるから…」

制多迦が今したいこと
矜羯羅の側にいたい
襖を開けて顔が見たい

開けようと思えばすぐ開けられる襖を見た制多迦が膝に顔を埋めた
「制多迦?」
呼ばれて制多迦が顔をあげる
「何してるんだっちゃ?」
「…んなら…」
制多迦に声をかけたのは湯気のたつカップを持った緊那羅だった
「…んがら…」
「あ…うん風邪ひいたって聞いたっちゃ だからこれハルミママさんが作ってくれたっちゃ」
緊那羅が襖に手をかけるとそれを開けると部屋に入る
「矜羯羅」
緊那羅の体越しに見えた布団が動いた
「何…」
少しだけ掠れた矜羯羅の声
「ハルミママさんが作った卵酒持ってきたっちゃ」
「卵酒?」
起き上がった矜羯羅が見えた
「熱いから気をつけてっちゃ」
「…ありがとう」
ボサボサの髪
やっぱりいつもより元気がない矜羯羅
側にいきたい
でも…
制多迦が隠れるように膝を抱えてうずくまった
「制多迦?」
緊那羅が制多迦を呼んだ
「入らないんだっちゃ?」
緊那羅に呼ばれそーっと部屋の中を覗きこんだ制多迦
「…制多迦?;」
顔半分だけを出した制多迦に緊那羅が首をかしげた
「何してるんだよ…」
卵酒を飲んで一息をついた矜羯羅が制多迦を見る
「…いじょうぶ?」
「大丈夫だよ…コホッ」
小さく咳をした矜羯羅に制多迦が身を乗り出した
緊那羅が矜羯羅の背中をさするのを見た制多迦が乗り出した体を再び引っ込めるとクロを抱き上げて立ち上がった
「制多迦? あれ…?」
矜羯羅の咳が止まって振り返るとそこに制多迦の姿はなかった