【無幻真天楼 第二部・第一回・参】そして僕にできること
「あれ? いなくなった…」
「竜…今から晩飯なのにどこ行ったんだっちゃ?」
さっきまでいたはずの竜之助の姿はなく
「主は気まぐれある」
「主はマイペースある」
阿分が言う
「まぁ…そうだろな;」
京助がヘッと口の端を上げていいながら鍋を置いた
「さてっ…と…悠はたぶん裏山あたりか…烏倶婆迦とかも一緒だろなたぶん」
「制多迦は矜羯羅のところだと思うっちゃ」
「んじゃ任せる」
「わかったっちゃ」
お盆を置いた緊那羅が京助と反対の方に歩いていく
その背中をしばらく見ていた京助も足を進めた
なんだろう
緊那羅といるとホッとするのは変わらないのにそれとは別に気まずいようなうまく説明できないモヤッとしたものがちょくちょく出てくる
話したいと思っても何だか何を話すのか考えるようになった
それでも口に出して名前を呼びたくなる
「はぁ」
玄関の戸を開けながら京助がため息をつく
「どうしたあるか京助? 悩みでもあるあるか?」
「悩み…はあるっちゃある」
聞いてきた阿に京助が返す
「あいやーそれはそれはあるな…我でよけりゃ悩み聞くある。話すよろし」
「…お前が離れてくれねぇことだよ;」
京助が答えた
作品名:【無幻真天楼 第二部・第一回・参】そして僕にできること 作家名:島原あゆむ