【無幻真天楼 第二部・第一回・参】そして僕にできること
視線の主の京助に制多迦がヘラッと笑っておかえりを言った
「…仲がよろしいですな…」
「悪い?」
制多迦に抱かれたまま矜羯羅が言う
「いや…;」
「京助こそどうしたのさそれ」
それ、と矜羯羅が聞いたのは京助の胸にしがみついている子狐姿の阿分
「…なんか離れんくなっちまった…」
「…かよしだね」
制多迦が笑いながら言った
「この場合仲良しっていっていいもんなんか;」
京助が自分の胸元を見る
見上げてきた阿分が首をかしげた
台所が近くなると何かを炒める音といい匂いがしてきた
胸元に阿分を着けたままの京助が台所の暖簾を少し上げて中を見るとこちらに背を向けて冷蔵庫を開けている緊那羅がいた
テーブルの上には出来上がったおかずが並び炊飯器からは湯気が上がっている
冷蔵庫を閉めた緊那羅の手には卵が5つ
「あ京助おかえりだっちゃ」
「うぃ」
振り向いた緊那羅に京助が片手を上げた
「…何だっちゃそれ…」
「いや…何か離れんくなっちまってだな;」
京助の胸元を見て緊那羅が聞く
「阿分…だっちゃよね?」
「そうある」
「我ら居場所見つけたある」
阿と分が顔だけを緊那羅に向けた
「居場所?」
緊那羅が京助を見てまた阿分を見る
「居場所って…」
「ハッハッハ離れろ;」
「嫌あるぅあああああ」
京助が阿分を引きはなそうと引っ張ると阿分が爪を立てて嫌がった
作品名:【無幻真天楼 第二部・第一回・参】そして僕にできること 作家名:島原あゆむ