【無幻真天楼 第二部・第一回・参】そして僕にできること
石段を上がりきった京助がふと神社の屋根に目を向けた
屋根の上に見えた姿は先日増えた新しい家族
京助が玄関ではなくその家族がいる神社まで足を進めた
「おいこらお前ら」
京助の声が聞こえたのかぴくんと耳を動かして屋根の下を見下ろした阿と分
「…京助」
「京助ある」
「何してんだ?」
京助が聞くと阿分が顔を見合わせそしてうつむいた
「なんだ?; 何かあったんか?」
「…なんでもねぇある」
小さく答えた阿に京助が頭をかいてため息をつく
「なんでもねぇやつがんな顔しねぇだろ;聞いてやるから降りてこい」
京助が言うと阿分がまた顔を見合わせそしてすとんと地面に降りた
「で? なしたん」
「…我らこれからどうしたらいいかわからねぇある」「…我ら居場所どこにあるのかわからねぇある」
神社の階段に座った京助に阿分が小さく言う
「これからどうしたら…ってお前らはどうしてぇんだよ」
「我ら…あるか?」
「そー。お前らはどうしてぇんだっての」
京助が聞く
黙り込んだ阿分を見て京助がため息をついた
「そんな難しく考えんなよ;今なにしたいんだ?」
「今…あるか?」
京助の言葉にきょとんとした阿分
「そー今」
「今…」
「ちなみに俺は今腹が減ってるから何か食いてぇ」
京助が言う
「そんなでいいあるか…?」
「そんなでいいんじゃね? これからってどこまでのこれからかわかんねぇし。今だってこれからに入んじゃねぇの?」
「…そんなもんある…か?」
「そんなもんだ」
ヘッと笑った京助
「で? 今お前らは何がしたいん」
「…我…腹減ったある」
「我…くしゃみしてぇあ…っ…くしっ!!;」
阿がくしゃみをした反動で子狐の姿に戻った
その阿を京助が抱き上げる
「先のこれからなんて俺もわかんねぇし。なら今のこれからしたいことやりゃいんじゃねぇの? な? よーし一個解決!!」
京助が笑う
「んで次はあれか居場所ってか…でもその前にお前も腹減ってんなら何か食うか」
分を見て言った京助に分が頷いた
作品名:【無幻真天楼 第二部・第一回・参】そして僕にできること 作家名:島原あゆむ