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愛だの恋だの言う前に

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バタバタと階段を駆け上がる足音で目が覚めた。
なんだ、母さんか?
寝ぼけた頭で人物の特定をしようとする。
が、そこで完璧に覚醒した。
この状況で、まさか母さんであるはずがない。
夜逃げした家に、真昼間に戻る者はいないだろう。
では、誰か?
一番可能性があるのは、やはり借金の取立て屋か?
瑞葉ではあるまい。あいつはこの家のスペアキーは持っていないはずだ。
布団を頭まですっぽり被り、息を殺して気配を伺った。
俺、玄関の鍵閉めたよな?
それとも、こういう人は鍵なんてあっさり開けられるものなのだろうか。
足音が部屋のすぐ前で止まる。
思わず息を止めた。
まずい。
ベランダから庭に逃げればよかったかな。
あぁ、俺はここで借金取りに見つかって借金の形に内臓でも売られるんだろうか...。
バンッと勢いよく扉が開かれた。
思わず身体がビクリと跳ねる。
これはもう完璧に見つかったな...。
己の不幸を嘆きつつ、ため息を吐く。
こんなことになるなら、あの時、寝るんじゃなかった。俺のバカ。
「おい、起きろ」
第一声はドスのきいた罵声だろうと想像していたのだが、予想は大幅に外れた。
布団の上からゆさゆさと揺さぶられ、優しく起こされる。
「おい、一真! 起きろ!」
なぜ俺の名前を知っている?
考え込む間もなく、ガバッと布団を剥ぎ取られる。
「うわっ!?」
布団をぎゅっと掴んでいた俺は、布団ごと引っ張り起こされる形になった。
「やっと起きたか、一真」
ベッドの横に立つ得体の知れない相手を、ポカンと見上げた。俺の顔はとてつもなく間抜け面だっただろう。
そこには、俺とほとんど年齢の変わらないであろう男が、ニコニコと笑顔で立っていた。
えぇと、最近のヤバイ職業の方はこんなに爽やかな笑顔で借金の取立てに来るのかな?
笑顔を崩さぬ相手に、俺はしばし言葉を失った。
「今日から俺がお前と一緒にこの家に住むぞ。よろしくな、一真」
こういう場合、どういった反応をすれば正しいのか、誰か教えてくれ。

作品名:愛だの恋だの言う前に 作家名:久慈午治