小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

バカみたいに今を愛してる(1)

INDEX|6ページ/6ページ|

前のページ
 


紅茶を飲み干して、席を立つ。
それに気づいて男も立ち上がった。

「帰る?」
「あぁ。邪魔したな」

俺はリビングを出る前に、なんとなくもう一度その部屋をぐるりと見回した。
本当になんとなくだ。その行為に深い意味などなかった。

「じゃあ気を付けてね」

玄関まで見送りについてきた男がそう言ったが、なんて返せばいいのかわからなくてとりあえず頷いておいた。

「……ごっそーさん」

靴を履いて扉を開ければ―――また元通りだ。

「あ、不良君!」

無視しようと思ったのに、何故か足はピタリと動かなくなった。
それなのに振り返ることも出来なくて、中途半端に固まる。

「良かったら、また来てよ」

男がどんな顔をしているのか、見なくてもわかった。

「もう来ねーよ」

偶々起きた偶然に、二度目なんてないだろ?

もう来ることはない。もう会うこともない。
きっと奴だってわかっているだろうに。

それでも、

「またね」

笑って手を振る男の言葉に、頷くことが出来る日が来るとしたら……。



―――バタン。



(そんな日、来ないけどな)

世界は決して、1つなんかじゃない。