最後の孤島 第１話 『不思議な島』
【倉野 比奈】（３）
私は、島の１番高いところにある神殿にいる。石造りの建物で、中は涼しかった。私たちの他には誰もいなかったので、静かだった。たくさんのロウソクが神殿の中を明るくしており、神秘的な場所だった。
私とダニエル・クルーソーという名前の彼の目の前には、不思議な模様が刻まれた丸い岩が、台座の上でふんわりと浮かんでいた。磁力で浮かんでいるのかと思ったが、ダニエルが言うには、魔力で浮かんでいるという。
私は、魔力というものが存在するなんて信じられなかった。島ぐるみのドッキリ番組だと思った。
そこで私は、その浮かんでいる丸い岩に近寄り、触ろうとした。浮かんでいるトリックを暴いてやろうとしたのだ。
バチィン！！！！！！
触ろうとした私の手は、見えない壁に跳ね返された。一瞬、感電したのかと思ったが、そうではないようだ。
「オレもやったよ、それ！」
私の後ろで、ダニエルが笑いながら言う。私はまた恥ずかしくなった……。
「もう触ってはいけませんよ」
突然、若い女性の声が静かに響いてきた……。
声がしたほうを見てみたら、若い女性がこちらにゆっくりと歩いてきてた。
その女の人は、清潔そうな白いローブを着ていて、髪と肌は白だ。なんとなく、この神殿にふさわしい神々しさが感じられる。美人だけど、クォーターのような特徴がある顔だ。そして、両手には不思議な見た目の杖……。
「すみません」
私はとりあえず謝った。これは日本人の悪い癖かもしれないが……。
「この魔力岩が、この島を守っているのです」
女性は静かな口調でそう言い切った……。真剣な口調だったし、少なくともキチガイではなさそうだ。
「また長話になりそうだから、今すぐ出よう」
ダニエルがヒソヒソと言ってきたけど、
「長老よりは短いですよ」
女性の耳に入ってしまったらしい……。気まずい……。
でも、長老から話を聞いたことを、なんで知っているのかな？
作品名：最後の孤島 第１話 『不思議な島』 作家名：やまさん