最後の孤島 第1話 『不思議な島』
「この魔力岩とこの神殿は、ワタシが生まれる前からずっとあります。この魔力岩が、島の魔力を生みだしているのです」
ぶっちゃけ、キチガイな発言だと感じた……。だけど、このセリフを聞いた私は、あるアイデアを思いついた。
それは、この岩を壊せば、この島から出られるのではないかということだ。見えない壁があるというけど、岩といっしょに壊れるかもしれない。
「念のため言っておきますが、魔力岩や見えない壁を壊すことは不可能ですよ、倉野比奈さん」
女性はキッパリと断言してきた。
なぜ、考えていることがわかったの? そもそも、なんで、私の名前をもう知っているの? なんなのこの人は?
「自己紹介が遅れました。ワタシの名前は、アン・アースリーです。この神殿の巫女を務めております」
「17歳で、2年連続でミス・セルカーク」
ダニエルが付け加えた。確かに、アースリーさんは美人だが、今はどうでもいい。
「あなたはこの島から早く出たいと、心からそう思っていますよね?」
アンという名前の女性は、見透かすような口調で言った。しゃくに触る言い方だ!
「当たり前じゃない!!!」
私はハッキリとした口調でそう言い切ると、外に向かって勢いよく飛び出す。ダニエルが私を呼び止めているが、構わずに走り続けた。
……外を出た途端、私は目の前の景色に前に思わず立ち止まる。
神殿は島で一番高い所にあるので、島全体を一望できる。まさに絶好の景色が、目の前に広がっていた……。
地平線に沈む夕日が、海をオレンジ色に輝かせ、島にある船や航空機が反射させる光が綺麗だった。
暗くなる前に、たいまつやロウソクに火を点ける人もおり、どんどん増えていくその光も、幻想的で綺麗だ。
その景色は、日本ではとても見られない美しさだ。(もちろん日本にも、美しい景色はたくさんあるけども)
……私は一瞬、この島で生涯を終えてもいいかもとさえ感じた。
「この島に一生住んでもいいやと思えてきただろ?」
後ろから、ダニエルの明るい声が聞こえてきた。それを否定しようと思ったが、言い返す言葉が見つからなかった……。
【第1話 終わり】
作品名:最後の孤島 第1話 『不思議な島』 作家名:やまさん