最後の孤島 第1話 『不思議な島』
……目を覚ますと、ふかふかのベッドの上で寝ていた。
私は一瞬だけ、自分の部屋にいると思った。自分のベッドのような、安心できる心地良さだったからだ。だが辺りを見回すと、すぐに違うとわかる。ここは見たこともない部屋だ。
すっかり目を覚ましても、現実感が沸いてこない。自分が乗っていた飛行機が墜落してしまい、今ここにいるという非日常な現実など、簡単に受け入れられるはずがない。
……だが、いつまでもこのままではいられない。まずは、自分がどこにいるのかを確かめなくては……。
私がいるのは綺麗な洋室だった。ホテルのような部屋で、白いバルコニーがあり、そこから日光が差しこんでいた。部屋にいるのは私だけだ。
私が今着ている服は、半袖Tシャツに半ズボンで、自分の服では無かったが、着心地は良い。部屋の壁に、私が着ていたセーラー服が洗濯されて、ハンガーにかけられていた。
私はベッドから下りると、バルコニーに出る。室内に届く日光が気持ちよさそうだったからだ。
バルコニーからは、美しい海原を眺めることができた。すぐ下は砂浜で、日光に当たった砂粒が反射している。テレビでしか見れないような、どこかの一流リゾート地みたいだ。
「あっ、起きたんだ」
突然、部屋のドアが開き、後ろから少年の声がした。さっと振り向くと、私を背負ってくれた彼がいた。彼はほっとした様子だった。
「待ってて! 今、朝食を持ってくるから!」
彼はそう言うと、ドアを閉めて歩いていった。どうやら、夕方から朝になったらしい。いったい、どれぐらい寝ていたのだろうか?
バルコニーから部屋に戻ると、彼が大急ぎで部屋に戻ってきた。彼は両手にトレイを持っており、トレイの上には、ホットミルクとスクランブルエッグがあった。とても美味しそうで、お腹が大音量で鳴り出しそうだ。
「座りなよ」
彼は小さなテーブルの上にトレイを置くと、木製の丸イスを引いて、私に座るよう促した。彼の表情や仕草は、落ち着いていて優しさを感じさせる。初対面の私にも安心感を抱かせるほどだ。
私はイスに座り、テーブルを挟んで向かい側のイスに彼も座った。
イスに座った私は、「いただきます」も言わずに、無意識に朝食をそのまま食べ始めてしまった。たぶん、本能がそうさせているのだ。必死に口を動かす私。美味しい!
スクランブルエッグを食べ、ホットミルクを飲み干し、朝食をすべて食べ終わってから、とても恥ずかしくなった……。必死な食べぶりを、目の前にいる彼に見られてしまったからだ。
「少なくとも3日以上、何も食べていないみたいだから、その食べっぷりは当然だよ!」
彼は微笑みながらそう言ってくれたけど、余計に恥ずかしくなった……。
そんな恥ずかしさを忘れるために、
「ここはどこなの?」
ここはどこなのかを尋ねた。少なくとも、ここは日本ではない。
「太平洋に浮かぶ南の島だよ。この島は安全だから安心してね」
彼は、私を動揺させまいと、優しく答えてくれた。
「他に流れついた人は?」
墜落した飛行機には、友達がいっしょに乗っており、心配で心配でたまらない。
「……残念だけど、今のところ、流れついたのは君だけだよ。飛行機の破片や荷物とかは、いくつか流れついていたけど」
彼は気の毒そうに言った。
友達がおそらく死んでいることに、ただ悲しむしかなかった……。私がオーストラリアへのホームステイなんかに誘わなければ、友達は飛行機の墜落に巻きこまれずに済んだのだ……。
作品名:最後の孤島 第1話 『不思議な島』 作家名:やまさん