最後の孤島 第1話 『不思議な島』
【少女】(2)
私は、少年に背負われている。
砂浜で声をかけてきた彼に、私は大丈夫だと答えたのだが、彼は私を背負ってくれた。英語を間違えたのかと思い、必死にノーを連発し、ジェスチャーで地面に下ろしてほしいと伝えた。
だけど、彼はそのまま歩き続けた。私の英語(まだ日常会話レベルだけど)とジェスチャーは通じているようだ。どうやら、彼は私を気遣ってくれているのだ。自分でも、自分が今弱り切っている状態であることぐらいはわかる。彼の背中の温もりだけでも、心身が癒されていく。
彼の好意に甘えることにした私は、周りの景色を眺めることにした。
そこで私は、ありえない光景を目にしたのだ……。
たくさんの船が浜辺に打ち上げられたり、航空機がジャングルに突き刺さったりしているのだ。船や航空機は、さまざまな時代や国の物で、まるで博物館にいるような気分だ。
さらにすごいのは、その船や航空機で、人々が暮らしていることだ。サビたりしているものが多いが、生活はできているようだ。
ジャングルの真ん中には市場のようなものがあり、多くの人々が往来している。そして、ジャングルの山の上には、神秘的な建物があり、太陽の光で綺麗に輝いていた。
もちろん、そんな神秘的かつ奇妙な光景は、テレビゲームや映画でも見たことない……。
私を背負っている彼は、浜辺で鎮座している豪華客船の近くまで来ると、口笛を吹いた。快く聞こえる口笛で、口笛が吹けない私は羨ましく感じた。
すると、豪華客船のデッキから、木製の簡易エレベーターが下りてきた。彼は私を背負ったままエレベーターに乗り、エレベーターについている鈴を鳴らす。
私と彼を乗せたエレベーターは上昇し、デッキまで上がると停止した。
「あら、その子は誰なの?」
エレベーターが停止すると、優しそうな女性の声が聞こえてきた。
デッキの上は、干されている洗濯物でいっぱいだった。大量の洗濯物が、一斉にたなびいていた。
彼はその女性に、私のことを説明している。
そのとき、目に映る洗濯物が、さらにどんどん増えていく……。どうやら、疲れで、ひどいめまいがしているようだ。
めまいはどんどん激しくなっていき、視界全体が洗濯物で埋め尽くされる……。
そして、そのまま気絶してしまった……。
作品名:最後の孤島 第1話 『不思議な島』 作家名:やまさん