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海野ごはん
海野ごはん
novelistID. 29750
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雨の日に彼女達へ本をあげる

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「大丈夫ですよ。久しぶりに街での飛び込みのセールスやっているけど、

今日は絶好調ですから」

「へぇー、そうなんだ。でもこんな雨の日に美人のセールスマンが来たら、

お店の人も喜ぶんじゃない?」

「美人に見えます?」

「見える、見える。でも、ものすごく気が強そうにも見えるけど」

「やっぱり、よく言われるんです。それで、この前このショートカットにしたんですけど」

と言って彼女は短く切った髪の毛を、自分で掻きあげた。

「じゃ、この前まで長かったんですか?見てみたかったなぁー」

「気が強そうに見えます?」

「見えますよ。はっきり意思を持った、少々のことじゃ折れない女に見えます」

「そんなに・・・この髪形でも見えるんだ・・・」

「美人は気が強そうに見えるのは宿命ですから、気にしなくてもいいんじゃないですか」

彼女はくすりと笑うと

「私、絶対なりたい自分がいるんです」と言った。

「今、その目標に向けてがんばってるんです」とも言った。



それから僕達は仕事の話をした。雨は降り続いていた。


「なんか、変な話になっちゃいましたね。少しはリラックスできました?」

「ええ、私もいきなり話し込んだりして、いい休憩になりました」

僕は自分のバッグを開けると、先ほどまで読んでた本を彼女に差し出した。

「これ、君に似合いそうだからあげるよ」

「えっ、いいんですか?何の本?」

「タイトルは『男はすべて女の奴隷である』村上龍の本だけど、

君にタイトルがぴったりだからあげます」

「村上龍は昔読んだことあるけど、こんな本があったんですね。

そんなにこの本のタイトル私にぴったりですか?」

彼女は笑いながら受け取った。

「ええ、あなたのための本かもしれない・・面白いから読んでみて。

返さなくてもいいから」