「レイコの青春」 37~39
「私も、ずいぶんとなでしこには助けられました。
同じように子供をなでしこに預けて、夜の繁華街で働いた
同僚やお友達がたくさんいます。
でも不思議なことに、ここの夜の町へは
募金活動の声が、たったの一言も届いてきません。
その理由は、さきほど実に見事に自己紹介をされた、
八千代お姐さんから、その理由を教えられました。
『おおくの女性たちの敵となるのが、水商売です。
好き好んで良家のお嬢さんやお嫁さんたちが、顔を出すはずがありません。
どうやら経験が若すぎて、本当の世間というものが解っていませんね、
ここらあたりからが、どうやら私の出番です。
私が美千子さんの片棒をかつぎますので、その何とか言う、
建設の会議に乗り込もうではありませんか。
夜働く女たちだって、昼間はちゃんと子育てをしていますし、
同じようにたくさんの子供たちを、ちゃんと立派に育て上げました。
ここに働く未婚のホステスさんたちだって、
やがては子を産みそれを育てあげる、同じ桐生の女です。
ここはひとつ女たちが手を組んで、昼と夜との共同戦線といきましょう。
世の男たちに、昼と夜の女たちが仲良くなると
いったいどんなことができるのか、どんな世の中が出来上がるのか、
目にものを見せてあげましょう。
桐生女の、本当の心意気を見せてあげようじゃありませんか』
そう言われて、ここへ乗り込むという経緯(いきさつ)になりました。
・・・という説明で、よろしいでしょうか、
八千代お姐さん?」
「はい、たいへん結構にございます。
明瞭にして、簡潔であればさらに言うことはありませんが、
まァ、混み入ったゆえ話、おおまかに意味さえわかれば充分でしょう。」
作品名:「レイコの青春」 37~39 作家名:落合順平