「レイコの青春」 37~39
「ほ~ら、ごらんなさい。
皆さん共にリラックスをされて、良い笑顔になりました。
最前のような状態で、しかめっ面ばかりをしていたのでは、
この会議の席上で、どのように頭を使い考えようとも、
決して良い考えなどは、出てまいりません。
肩の力を充分に抜いてくださいまし、
そうすることで、ひょいと良い考えなども、浮かんでくるかもしれません。
さて・・・
充分に場がなごみましたので、後は
若い人たちにお任せをして、老いぼれは、とっとと、
引っ込むことにいたしましょう。」
思わず、小さな拍手がおこります。
にこりともう一度笑顔を返した八千代姐さんが、早々に美千子の
背後へ潜り込んでしまいます。
美千子が入れ替わりに前へ出ます。
「最初から突然に、
驚ろかせてしまってごめんなさい。
実は私の独断で、低迷している募金活動の打開のために、
こうして、水商売業界の人たちに、応援のお願いして回りました。
皆さんもよくご存じのように、無認可のなでしこ保育園は
わたしたちが園長先生に、夜完専用の保育園を運営してくださいと、
お願いしたことから、その歴史がはじまりました。
仲町の雑居ビルでの最盛時には、12人の新生児や乳幼児、
2歳児や3歳児たちが、そこでお世話になりました。
いまでこそ園も移転して、昼間を中心にした保育が運営されていますが、
もともとは、夜の繁華街で子供を抱えて働く人たちにとっての
駆け込み寺が、なでしこの役割でした。」
「駆け込み寺は、古いわね~、
でも、言わんとする意味にはぴったりだけど・・・」
陽子が、横やりをいれます。
一息入れた美千子が、悪戯っぽく笑う陽子へほほ笑みを返します。
作品名:「レイコの青春」 37~39 作家名:落合順平