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「レイコの青春」 37~39

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 「でも、そのなでしこのおかげで
 仲町で働くお母さんたちが、ずいぶんと助かったはずでしょう。

 すごいことだと私は思うけど。」

 「レイコ、私が聴いてほしいのは、
 実はそれとはまったく別の話なの。
 自分の心が実は病んでいたことに、まったく
 気がついていない自分が居たの。
 親の反対を押し切って二度も、
 認めてもらえない結婚を繰り返した挙句、
 それぞれ親の違う子供を抱えて、私が今日まで頑張ってこれたのも、
 実は、園長先生と出会えたおかげなの。
 ほんとうは、自分でも水商売の仕事は嫌いだった。
 生きるためにと、やりきれない気持ちの中で仕事だけをしていたわ。
 いつまで経っても、水商売から抜け出すこともできず、
 中途半端でやりきれない生活ばかりを繰り返していたの。
 それでも、自分を見失わずに此処までやってこれたのは、
 第二のお母さん代わりにもなってくれた
 園長先生のおかげなの。」



 「私には美千子が、そんな風には全然見えなかった。
 いつでも行動的で、明るい美千子の
 頑張り屋ぶりをうらやましいと思ってた。
 私には、とても真似ができないことばかりだもの、
 あなたのそんなエネルギーには、いつもあこがれていた。」



 「そう・・・それが誰もが知っている、表向きの私だった。
 でも実際にやってきたそれまでの事と、
 わたしの本心は、まるまる正反対のままだった。
 園長先生と、最初に夜間保育園をたちあげた時も、実はそうだった。
 あの時だって、私の本当の気持ちは、
 24時間子供と一緒にいて、自分の手だけで子育てがしたみたかった。
 とんでもないと言える、自己矛盾の世界だった。
 無認可の保育園をたちあげておきながら、
 専業主婦のように、いつも子供たちと一緒に居たいなんて
 本気で考えていた。
 本音を言えば、翔太や綾乃と片時も離れずに、
 いつも一緒に暮らしていたかった。
 でも、そんな私の揺れていた気持ちを園長先生は
 ちゃんと、受け止めてくれたわ。

 『あなたが優しい母親であることは、見ている私にはよくわかります。
 そのあなたの分まで子供たちを、わたしが代わりに見守っていますから、
 あなたは安心して仕事に行ってらっしゃい』、そう言って
 いつも優しく励ましてくれたのよ。
 私の方が、子供と離れただけで心細くなってしまうの。
 でも園長先生は、そんな私の心の中もちゃんと理解をしてくれた。
 あなたのそんな心のあり方も、これから私と一緒に、
 なでしこで育てていきましょう。
 そう、言って励ましてくれたのよ。
 解る、レイコ。
 園長先生は、私を含めて3人を育ててくれたんだ。」