「レイコの青春」 37~39
「え?商工会議所ではなく、
そちらへ行くのですか、事務局とは全く反対の方向になりますが・・・」
「駄目な物は、何度訪ねたところで結果は同じです。
会議所の事務局を何度訪ねたところで、
結局は、また、埒の明かない対応になるだけでしょう。
こちらでは対応ができませんと、またまた却下をされて終わりです。
皆さんが伺ったときにも、おそらくそんな風に
ごく簡単にあしらわれて、きっぱりと断られたのではありませんか?
そんなときでも、トップを落しさえすれば、組織なんてものは
いとも簡単に『回れ右』をしてしまうものです。
まァ・・・大船に乗ったつもりで、
今日はひとつ、この八千代姐さんに任せてくださいまし。
鳴かない鶯(うぐいす)などを、見事に鳴かせに、
参りましょう。」
靖子の運転する車は、言われた通りに
真新しい電子計算センターを立ち上げたばかりの
(市内で最大規模を誇る)電子部品工場の敷地内へ滑り込みました。
尻ごみをする靖子さんを叱咤して、
八千代姐さんが、本社ビル正面にある迎賓用の駐車場へ
無理やり車を停めさせてしまいます。
案の定・・・・ものの数分と経たないうちに、もう制服姿の守衛さんが
おっとり刀で、すっ飛んできました。
が、八千代姐さんの姿を見るやいなや、勢いよく最敬礼をした瞬間に、
もう踵(きびす)を返して、今度は、正面玄関に居る受付嬢に向かって
脱兎のごとく駆け出していきました。
作品名:「レイコの青春」 37~39 作家名:落合順平