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ココロを持った人形

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 お母さんのお手伝いをしてから二階の部屋に行くと、机の上で充電していた携帯電話にお父さんからのメールが来ていた。内容はいつもの“おやすみのあいさつ”だから、先にパジャマに着替える。

 お父さんのメールにはいつも写真が付いている。わたしが去年お父さんにあげた人形の写真だ。これが初めて作った人形で、二番目のものをお母さんが持っていて、三番目はカズくんの病室にある。お父さんは最初の人形を貰ったことがすごく嬉しかったらしくて、お仕事の時も近くに置いているってメールで言っていた。

 お父さんのメールにはいつものように『優香を愛しているよ。おやすみ』って書いてあったから、わたしも『お父さんのこと大好きだよ。おやすみなさい』って返信した。


 寝る前にベッドの上に正座して、窓から見える夜空にお祈りをする。


(お母さんとお父さんとわたしとカズくんが仲良く一緒に暮らせますように)


 神様は嘘のお祈りなんか聞いてくれない。お母さんがそう言っていた。だから、わたしは本当のココロでお祈りをする。
 

(本当なんです、神様。わたしのお願いはそれだけなんです。他のココロなんて無いんです。もう、無いんです)


 私は一生懸命お祈りをした。




 今日の夜空に星なんてひとつも見えないってことに気づいていたけれど。

作品名:ココロを持った人形 作家名:大橋零人