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エイユウの話 ~春~

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「アウリーって、キースの事好きよね?」
「・・・は?」
 確たる証拠も無く、しかも恋愛関連にほとほと疎いキサカに、そんな同意を求める彼女が理解不明だった。そんな中でショートを起こさなかっただけマシなほうだ。
 しかしラジィはかなり真剣な顔だ。しかもあまりにも淡白すぎたキサカの反応に、いらだちまで覚えていた。彼女はキサカの目をしっかりととらえて声を張る。
「『は?』じゃなくて!」
 確信があるのなら聞く必要もない。それなのにわざわざ確認してくるラジィに、キサカは呆れを通り越して感心してしまった。女の恋愛への反応はすごい、と。彼は頭を勢いよくガリガリと掻いた。
「根拠も無いのに、なんでンな事言い切れんだよ・・・」
「証拠ならあるじゃない。キースを見るときの彼女の目、あたしには解るわ」
 自信満々に言い張る彼女に、キサカは嘆息した。彼女は時々、無駄に自信があるときがある。それも確証がなかったり、下手すれば間違えているときだってあるというのに。これ以上聞いてもいきっと今度は「女の勘」とか言ってくるに違いない。
作品名:エイユウの話 ~春~ 作家名:神田 諷