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エイユウの話 ~春~

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 彼は窓を開けて、付箋で作った紙飛行機を飛ばす。風の具合と付箋についていた糊が相成って、うまい具合にラジィの頭に落ちた。ラジィがきょろきょろと周囲を見回してから、キースの教室の方を見る。
 そっちじゃねぇって。
 キサカは笑いながらラジィを観察した。天から見ている神様もこんな感じなのだろうかと、無宗教のくせに宗教的な考えに行き着く。
 一方、いきなり頭に落ちてきた小さな紙飛行機に、ラジィは戸惑っていた。キースはこんなことしないし、彼女のほかの友達には紙飛行機という発想を出す子はいない。頭に乗っかってしまったそれを外そうと手を伸ばした。触れたときにぺたっとして、それが付箋である事に気付く。茶色い自分の髪が何本か糊に付着していた。
「なんなのよ、もう」
 ラジィは不満を募らせたまま、紙飛行機を解体する。するとそこに見慣れない汚い文字が羅列していて、その下には聞いた名前が書かれていた。
『授業後、キースん所行くぞ キサカ』
「キサカ?」
 最後の名前を復唱したラジィは、二階の教室を見回した。窓際にいるキサカを見つける。キサカはすでにラジィのほうを見ており、笑いをこらえながら小さく、しかし解るように手を振ってきた。授業中のその余裕に、真面目なラジィはカチンと来る。
「なんなのよ、これ!」
 あまり大声では授業に迷惑をかけるので、口の動きが伝わるよう少し大げさに動かしながら、無声音で尋ねる。言いたい事が伝わったのか伝わらなかったのか解らないが、キサカはちらりと教壇のほうを見てから、ラジィに「あかんべぇ」をしてきた。ラジィの反応も見ずに、彼は授業に戻ってしまう。
 わざわざ教壇をチェックした辺りが頭に来る。彼女は苦情を言えない事に悶々とし、落とされた付箋を半分に破いてから近くのゴミ箱に突っ込んだ。
作品名:エイユウの話 ~春~ 作家名:神田 諷