エイユウの話 ~春~
「魔力が高いのも考え物だな」
事情を聞いた彼がそう言って笑った。が、苦労してきたキースは自身を笑っていいのか困惑する。キサカが嫌味で笑ったわけではないとわかっても、繊細なところなのだ。そんな彼をかばうように、ラジィが話に割り込んできた。
「染めなくて正解じゃない!外見で人を判断するような人間がすぐに解るもの」
男女の距離というのを踏まえないラジィに、キサカは思わず後ろに下がった。相当偏見というものが嫌いなのだと解る。ラジィの額に思いきりでこピンを入れてから、自分でフォローした。
「責めてねぇよ。でも、染めなくていいって考えには同感だな」
キサカの意外な返答に、二人が顔を見合わせた。金髪を肯定的に見る生徒は、ラジィ以来初めてだったのだ。否定的に見ない人ならいくらかいるが。それに彼ならラジィの言うような人間など、すぐに解ってしまいそうなものだし。
ラジィの金髪肯定論とは考えが違うと思ったキースが、つい理由を尋ねる。風になびく金色の髪をじっと見つめて、キサカはこぼした。
「だって綺麗じゃん、その色。太陽みてぇ」
確かに日の光を受けて輝く彼の金髪は、近くで見える太陽そのものだった。光を受けているだけなのに、まるでそれ自体が光を放っているようだ、そんな幼児のような純粋すぎる回答に、二人はもう一度顔を合わせ、それからそろって笑い出した。何で笑われているのか解らないキサカまで、一緒になって肩を揺らす。
作品名:エイユウの話 ~春~ 作家名:神田 諷