12ピースのパズル
彼女は、クリスマスソングが流れる街を 待ち合わせの場所に向かっていた。
手には、華やかにラッピングされたワインを抱えて、心をときめかせて向かう。
月初めに支給された、いわゆる冬のボーナスを握りしめ、彼の生まれた年代物のワインを
予約注文したものだ。
夜が深くなるにつれ、彼女の吐く息の白さが増す。
彼女と店との距離が近づくにつれ、冷えた頬は、紅潮して見えた。
大きな木枠のドアを開け、店内に入ると、黒服のスタッフが出迎え尋ねる。
「予約してあると思いますが……」
黒服のスタッフは彼の苗字を口にすると、速やかに彼女の前を歩き誘導した。
椅子を下げ、腰掛けるタイミングに合わせ、椅子を戻す。
手馴れたその一連の動きは、気持ちを邪魔しない心地良いものだった。
「お待たせ。はい。メリークリスマス」
彼女は、最高の笑顔で彼にワインの包みを渡す。
「ありがとう。だけど、レストランでこれを渡すと、店の人は渋い顔をするよ」
彼の眼差しは、いつもと変わりなく優しさが感じられた。
「あ、ごめんなさい。つい貴方と同じワインを手に入れて嬉しかったの…だから」
彼は、にっこり笑うと、右手を差し上げた。
黒服のスタッフが、横に着いた。
「申し訳ない。彼女が僕のために用意してくれたこれを出して頂けないでしょうか」
黒服のスタッフは頷き、片手を上げた。もうひとり男が席にやってきた。
「当店のソムリエです。こちらですね」
ボトルを受け取り、何やら確かめる。
「かしこまりました。少しお時間を戴けますか?デキャンティングしてまいります」
ソムリエの男は、ボトルをナフキンで抱え、奥へと戻った。
黒服のスタッフが、一礼する。
「ワインを待たれますか?それともご予約通りお出ししても宜しいでしょうか」
彼は、彼女に目をやりながら、予約のコースを勧めるよう答えた。
彼女は、彼のスマートな態度と機転に好意を深めた。
「じゃあ、これは僕からのプレゼントだ」
小さめの小箱をテーブルクロスの上を滑らせ、彼女に渡した。
「何かしら?開けてもいい?」
彼は、笑みを見せ頷いた。
レッドとグリーンのクリスマスカラーのリボンを解き、包装紙を開いた。
「……これって……」
「パズル」
「ええ、そうね。でも簡単ね。だって12ピースよ」
「そう?」
「ええ、すぐにでもできてしまうわ」
彼女は、笑みを失わない彼にからかわれているのかと不満を感じた。
手には、華やかにラッピングされたワインを抱えて、心をときめかせて向かう。
月初めに支給された、いわゆる冬のボーナスを握りしめ、彼の生まれた年代物のワインを
予約注文したものだ。
夜が深くなるにつれ、彼女の吐く息の白さが増す。
彼女と店との距離が近づくにつれ、冷えた頬は、紅潮して見えた。
大きな木枠のドアを開け、店内に入ると、黒服のスタッフが出迎え尋ねる。
「予約してあると思いますが……」
黒服のスタッフは彼の苗字を口にすると、速やかに彼女の前を歩き誘導した。
椅子を下げ、腰掛けるタイミングに合わせ、椅子を戻す。
手馴れたその一連の動きは、気持ちを邪魔しない心地良いものだった。
「お待たせ。はい。メリークリスマス」
彼女は、最高の笑顔で彼にワインの包みを渡す。
「ありがとう。だけど、レストランでこれを渡すと、店の人は渋い顔をするよ」
彼の眼差しは、いつもと変わりなく優しさが感じられた。
「あ、ごめんなさい。つい貴方と同じワインを手に入れて嬉しかったの…だから」
彼は、にっこり笑うと、右手を差し上げた。
黒服のスタッフが、横に着いた。
「申し訳ない。彼女が僕のために用意してくれたこれを出して頂けないでしょうか」
黒服のスタッフは頷き、片手を上げた。もうひとり男が席にやってきた。
「当店のソムリエです。こちらですね」
ボトルを受け取り、何やら確かめる。
「かしこまりました。少しお時間を戴けますか?デキャンティングしてまいります」
ソムリエの男は、ボトルをナフキンで抱え、奥へと戻った。
黒服のスタッフが、一礼する。
「ワインを待たれますか?それともご予約通りお出ししても宜しいでしょうか」
彼は、彼女に目をやりながら、予約のコースを勧めるよう答えた。
彼女は、彼のスマートな態度と機転に好意を深めた。
「じゃあ、これは僕からのプレゼントだ」
小さめの小箱をテーブルクロスの上を滑らせ、彼女に渡した。
「何かしら?開けてもいい?」
彼は、笑みを見せ頷いた。
レッドとグリーンのクリスマスカラーのリボンを解き、包装紙を開いた。
「……これって……」
「パズル」
「ええ、そうね。でも簡単ね。だって12ピースよ」
「そう?」
「ええ、すぐにでもできてしまうわ」
彼女は、笑みを失わない彼にからかわれているのかと不満を感じた。