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海野ごはん
海野ごはん
novelistID. 29750
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不倫ホテル

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 出会いは中州の小さなバーだった。
その日僕はしこたま飲んで酔いつぶれる一歩手前だった。
カウンターの端に一人で座っていた僕は、よく知っている店のバーテンダーとオカマの話をして盛り上がっていた。僕は酔うと饒舌になってしまうらしい。その晩も、かなり喋っていた。

 ひとつ席を置いて年配の男性と来ていた彼女は、僕の話にしきりに笑っていた。笑いだけでは堪え切れなくなった彼女は、話の内容に質問を入れたり相槌を打ってきて、いつの間にかバーテンダーと4人の話になっていた。年配の男性は老人に近い年齢だった。
どういう関係か聞いてみると父親だと彼女は言った。僕とバーテンダーは親子で飲みに来るなんて凄いと囃子立てた。
「ただのファザコンなのよ」と彼女は笑っていた。

 仕事を聞かれ、婦人服の店だと教えると、さっそく彼女は次の日お店に買いに来てくれた。
駐車場に白いベンツを停め、昨夜の父親と連れ立って店の中を歩き回り服を選び始めた。
お金持ちだと分かったのは買い方が半端じゃなかった。
スタッフの女性にこれとそれとあれもと言って試着室に入っていった。
父親も一緒になって入るので「本格的なファザコン」だと僕は思った。

「オーナー、ちょっと来てくださらない」彼女の呼ぶ声が試着室から聞こえた。
何事かとそばに行くと、ジッパーが閉まらないと言う。
「失礼します」と言って、少しカーテンを開けると彼女の白い背中があらわに見えた。
仕事柄そういう風にお客様を見ることが多いが、隣に父親がいて、女性の肌が大きく見えるのは変な感じで恥ずかしかった。
ジッパーは壊れているのでなく、ちょっとひっかかっただけだった。
父親はサングラスをかけていたので表情が伺えないというか、見る勇気もなかった。
 彼は店に入ってきてからずっと押し黙ったままだった。時折、彼女の言葉に頷いていたが。
その日は20万円くらいの買い物をして頂いた。うちにとってはかなりの上客だ。





作品名:不倫ホテル 作家名:海野ごはん