ツイン’ズ
09_勃発!?
私はいったい誰なのか……? まさに真理に迫ってしまいそうな問いだ……。
時雨直樹――そう、それが私の名前。某○○学園高校に通うちょー美少女の2年生。学校では副会長も務めていたのだが、わけあって今は世界征服を目論み暗躍中。だが、本当にそうなのか?
この世界には私が二人いる。私――そして直樹♂……私は女であいつは♂だ。
はじめは一人の人間だった。それが二人になって、妖狐先生のモルモットにされて……私は世界征服を目論んだ。まず手始めにしたことは、妖狐先生へのお願い――。
モルモットにされた挙句に私は得体の知れないクスリを無理やりの飲ませた……そして私は悟った。だが、最近はその決意が正しかったものなのか……?
あの時のことを思い出せば、何か手がかりが掴めるのか、掴めないのか?
そして、一瞬私の意識は遥か彼方まで飛んだ――。
頭がイタイ、クラクラする……。
「……う、ううん」
「だいじょうぶ、ナオキちゃん?」
私を誰かが呼んでいる……妖孤先生? 視界がぼやけてよく見えない。そうか、変な機械に入れられて……。
「は〜っははは、わかったぞ、今すべてがわかった」
「どうしたのナオキちゃん!?」
「おぉこれはこれは、妖弧嬢ではないか、ううん美しい、さすがは我が学校一の美人教師」
私は妖弧のあごにに手をやり、彼女の顔をまじまじと見つめた。
「あぁん照れるわぁ、ってナオキちゃんどうしたのなんか変よ」
私は全てを悟った。私が二人に分裂した理由、そして私のすべきことが。
「私はこの世界にいる全ての女性を手に入れなくてはならない、そのためにここに世界征服を宣言する」
「えっ?」
なぜだかはわからないけれど、私はとにかく世界征服をしなくてはならない。そんな気がする。気のせいだったら取り返しがつかないね。
「ナオキちゃん……失敗だわ、実験」
「案ずることはない、これが本来の私なのだ。という訳でまずは君に私のモノになってもらおう」
この話とあのシーンの間には実はこんなことがあった。
「妖狐先生お願いがある」
「なぁに?」
「私と一緒に世界征服をしよう」
「どうしようかしらん。わたしも近々世界征服しようと思っていたのよねぇ〜、ナオキちゃんが私の下僕になるなら……」
「それは断る。私がトップじゃないとヤダ!」
「交渉決裂ねぇん」
妖狐先生は白衣のポケットに手を突っ込むと昔のSFに出てきそうなファンシーな光線銃らしき物を取り出して、私に向けたではないか!?
「妖狐先生マジで撃ったりしなよね!?」
「それはどうかしらん?」
私は瞬時に横に飛び、光線銃の先からポロロ〜ンって感で出たリング状の光線を避けた。マジで撃ったよ。
「殺す気かっ!!」
「あらん、外したわねぇん。でも今度は仕留めてアゲル」
再び銃口を私に向ける妖狐先生――。私は一か八かの賭けに出た。
床を蹴り妖狐先生に飛び付きそのまま押し倒す。その拍子に妖狐先生の手に握られていたファンシーな銃が宙を飛び、床を跳ね、タロウくん2号の足元へ!?
「タロウくん2号撃ってぇ〜ん!!」
しまった!! 私は瞬時に起き上がりタロウくん1号へ飛びかかろうと――だが、銃口からポロロ〜ンと光線が放たれ、当たった。そう、当たった。当たったんだけど……。
「何で妖狐先生に当ててんの!?」
「撃テト言ワレタノデ撃チマシタ」
……このロボット使えない。使えなさ過ぎ……。
じゃない、妖狐先生は大丈夫なのか!? ……あれっ?
「先生だいじょぶなの?」
「だいじょぶよぉん。あの銃は『今日の友は明日の敵銃』、あの光線の光を浴びた者は誰でも使用者の配下になってしまうという発明品よぉん。つまり今はタロウくん2号の配下ってことねぇん」
「なるほど……。タロウくん2号その銃貸して」
「畏マリマシタ」
私は銃を受け取ると、ポロロ〜ン、ポロロ〜ンとタロウくん1号2号に撃った。
「ナオキちゃん、何てことす――」
ゴンと妖狐先生はタロウくん1号に殴られ気絶した。
「なんてことするの!?」
「ナオキ様ニ危害を加エヨウトシタノデ処理シマシタ」
「妖狐先生だいじょぶ!?」
彼女に駆け寄り脈を確かめ息をしているか確かめる。脈拍正常、呼吸も正常、どうやら気を失っているだけらしい。次にとる処置は……そうだ熱いキッスだ(人工呼吸)。
私は妖狐先生の身体を抱き寄せ唇と唇を重ね合わせた。
ドガン!!
「なんだ、何の音だ!?」
私は唇を離さないでそのまま横目で音のした方向を見た。そこには直樹♂の姿が……!?
その後、私は気を失ったままの妖狐先生を担いで逃走……その後妖狐先生にポロロ〜ンってして……懐かしい思い出だ。
つまりだ!! 唐突な話ではあるが、私と直樹♂は分裂する前の記憶は共有している、名前も同じ、顔も一緒だ。しかし、分裂後は私とあいつはもはや別の生命体であり、別の人格を持っている。それが問いの答えだ。
「ナオキ様、準備ガ完了シマシタ」
「ああ、そうか、ありがとうタロウくん2号」
午後のティータイムをしながら考えごとをしていた私をタロウくん2号が呼びに来てくれた。つまり、アレが完成したということだな。そうアレがな……は〜ははははっ!!
妖狐先生の自宅地下にそのアレはある。地下と行っても直樹♂を閉じ込めていた地下牢よりももっと地下、地下約300メートルにそれはある。
妖狐先生の自宅にある書斎。ここに地下へと続く秘密の入り口がある。
「この本だな……」
私は『世界電波論』という妖狐先生著書の本に手を掛けた。すると本棚が左右に開け中からエレベーターが現れた。これが妖狐ちゃん第1研究所の入り口だ。ちなみに学校にあったのは第3らしい……ってことは第2がどこかにあるのか!?
エレベーターで地下へと降りると、そこは金属でできた壁と床の広がる研究所。金属は合金でガンダニ○ム合金というらしい。どっからそんな合金持って来たんだ?
「ナオキちゃん、ついにアレが完成したわよぉん。ついていらっしゃ〜い」
妖狐先生の軽快なステップの後ろを付いて行く私。あのステップから察するに今度の発明品はすばらしい出来なのか……いや、妖狐先生の歩き方は普段からモデル歩きをハデにしたような歩き方だ。
足が止まる、そして妖狐先生によって押されたドアの開閉ボタン――開かれたドアの向こうに見えてくるアレ。
私は巨大な、そして天井の高い部屋に入り、アレを下から上へと見上げた。
「は〜ははははっ、うん、すばらしいできだ。でかしたぞ妖狐先生」
「このくらい夕飯前よぉん」
名称アルテミス初号機、全高18m、重量70t、出力10万馬力、超高性能ヒト型ロボだ。私はこれに乗って世界を我が手に……。
「すぐに出撃だ」
「はい、これ」
妖狐先生が私に手渡したものはプラグスーツ……身体にフィットする素材で作られていて……最近お腹周りが気になるのだが……着なくてはいけないのか?
「もちろん裸の上から着るのよぉん」
「え゛っ!?」
「そうしないと情報がちゃんと伝達されなくて誤作動が起こるのよねぇ〜。ああ、別にそのスーツ着たくないなら裸で乗って頂戴」
「着ます!」
作品名:ツイン’ズ 作家名:秋月あきら(秋月瑛)