ツイン’ズ
「ココハ博士ノ家デス」
博士っていうのは玉藻先生のことだろう……待てよ……タロウくんってしゃべれたのか!? 自分で話し掛けてなんだけど今初めて知ったぞおい!
「あのさぁ〜、ここから出してくれないかなぁ〜?」
俺はダメもとで頼んでみた。そしたらビックリ仰天。
「イイデスヨ」
「はっ!?」
自分で頼んでおいてなんだけど、マジビックリみたいな。
「だって、見張ってろって言われてるんじゃないの?」
「ソウデスヨ」
「じゃあなんで出してくれるのさ?」
「見張ッテイルヨウニ言ワレタダケデスカラ」
俺は正直思った。このダメロボット!! って。
「あのさ、それって牢屋の外に出ないように見張ってろって意味じゃないの?」
「ナルホドソウデスネ、デハ外ニ出ナイヨウニ見張リマス」
……俺は墓穴を掘った。もう少しで出られるところだったのに……俺は正直思った。このダメ直樹!! って。
ふっ、仕方ない、別の方法を探そう。が、マジでどうやって外に出ればいいんだ。いや待てよ、外に出る必要があるのか。そりゃー捕まったんだから逃げるのが普通だろ。でも何で捕まったからって逃げる必要があるんだ。だんだん頭が混乱してきたぞ。
よし、なぜ逃げるのかを考えよう。俺が俺’に捕まった、それすなわちヒドイ目に遭わされるに決まってるんだ。よし、それが逃げ出す理由だ。
逃げ出す理由が出来たら次は逃げ出す方法だ。さぁ、考えろ俺、全神経を逃げ出すことを考えるために使うんだ。よしがんばれ……。そんな方法見つかんない、俺の一般人の脳ではそんなことわかるかーって感じだ。
とか言いつつ俺の頭に考えが浮かんだ、ひらめいた、パッとね。その作戦とは、タロウくん1号を騙してどうにかしよう作戦だ。
「タロウくん1号、話があるんだけど……」
「何デスカ、ナオキ♂?」
てゆーか、こいつも俺のことナオキ♂って呼ぶんかい?
「あのさぁ〜、ここ、出してくれないかな?」
「ソレハデキマセン」
「そこを何とか!」
「無理デス」
タロウくん1号はなかなか手ごわいな……いや、むしろ当たり前の行動と言えるかもしれない……いや、またまたむしろ、俺が馬鹿なのか!! ……ふっ、たしかにここで終わったら、俺はただの馬鹿さ。しかし、俺には今世紀最大じゃない作戦があるのだ……ははは(ってなんか俺’のノリに似てきたような)。
「タロウくん1号、相談がある」
「ナンデショウカ?」
「ちょっと、こっちに来てくれないかな」
「ハイ、タダ今」
タロウくん1号が俺の手の届く範囲まで来た所で俺はタロウくん1号の頭をぶん殴った!!
ゴン!! という音が静かな地下牢に鳴り響くそして、直ぐにゴキッって音が後に続く……。
説明しよう。俺はタロウくん1号を自分の側まで来た所で殴って気絶させる作戦を立てたのだ。しかし、俺は浅はかだった……むしろ馬鹿だった。タロウくんは金属で出来ている。つまり、人間の手で殴った場合、俺の手は負傷する。むしろ手加減無しでタロウくん1号を殴った場合、俺の手は折れる、つまり大怪我だ。
ってこんな解説をしているさなかも俺の手は痛い……きっと折れた。
俺は名誉の負傷をした――右手(利き手)を抑えながら、タロウくんを涙目で見つめた(仔猫ような瞳で)。
「タ、タロウくん……医者を……呼んでくれ」
「カシコマリマシタ」
タロウくん1号は痛みに悶える俺を置いてどこかに消えた。
静かな地下室に独り俺は残された。……寂しい、悲しい、虚しい……ふっ、空虚だ。
1分が過ぎ――3分が過ぎ――10分が過ぎた。遅い遅すぎるぞ!! 何があったんだ、これは緊急事態に違いない……きっと宇宙人が攻めて来たんだ……なんてことはないだろうけど、何かがあったに違いない。
どご〜ん!! というアニメチックな爆音が上の方から聴こえてきた。鼓膜が破れんばかりだ。……な、何があったんだ!?
地下室へと続く階段を誰かが駆け下りて来る足音が聴こえた。誰だ、誰だ、誰だぁ〜♪。
「助けに来たゾ、直樹!!」
腹話術っぽい……いや腹話術の声が=アリス=宙か!? そして、その後ろには美咲までいるではないか!?
俺は思わず、普通というか、落ち着いたというか、そんな感じな質問をしてしまった。
「何で二人がここにいるんだ?」
「……助けに……来た」
相変わらず、宙の声は小さい。しかし、二人がここに来た理由はわかった。だが、しかし、俺が聞きたいのそんなことじゃない、俺が聞きたいのは、
「どうして助けに来たんだ?」
ってことだ。
「あんたが捕まったって聞いたから助けに来たんじゃない」
って当たり前の質問返しを美咲がして来た。だが、俺が聞きたいのはそんなことじゃないっつーの。
「だから、俺が聞きたいのはそんなことじゃなくって、どうして……」
俺は説明に困った。だが宙が俺の心を読んで、俺の変わりに説明してくれた。
「つまり……私たちは、世界の秩序を守るために来たの……」
説明してくれたのはありがたいが……意味不明だ。で、宙は俺にもわかるように説明し直してくれた。
「実はこの物語は途中打ち切りになったの……だから、展開を急いで進める都合上、物語が崩壊。めちゃくちゃで収拾つかない壮大かつ壮絶なへっぽこストーリーになったの……」
わかったようで、わからない。でもわかった。
ようするにとにかく俺はここをどうでもいいから脱出しなくてはいけない。そういうことだろ?
状況を理解したようでしていな俺は急いでここを逃げ出すことにした。しかし、当たり前のように妨害が入る。……ふっ、展開を急ぎすぎ且つ、在り来たりだ。
作品名:ツイン’ズ 作家名:秋月あきら(秋月瑛)