ツイン’ズ
06_今日の友は明日の敵
案の定と言うか、予想通りっていうか、展開的にサクサク行かなきゃならないっていうか……とにかくやっぱり、外には俺’の姿が!!
「はーっはははは、よく逃げも隠れもせずに出てきたな直樹♂!!」
「その呼び方止めてくれないか?」
てゆーか、犬とかじゃないんだから。
愛は不思議な表情をして俺’を指差して本家俺を指差して聞いていた。
「あれがナオキ♀か?」
「なんだよナオキメスって。まぁあれが俺の分身だ」
ナオキ♀……愛らしい言い方かもしれない。
おぉ、そうだそんなことより俺’がここに何しに来たかを聞き出さなくては……と思ったらあっちが勝手に聞いてもいないのに言ってきた。
「ふふふ、今回は宙がいないようだ。そうなればこっちのものだ、コテンパンにしてくれよう。しかも今回は切り札を持ってきたのだ!」
「……なぁ俺’、スピーカーでしゃべるの止めてくれないか?」
俺’と俺の距離は5メートルほど……こんな距離でスピーカーなんか使うなよ!!
「仕方ないな」
俺’はそう言うと直ぐにスピーカーを俺に向かって思いっきり投げつけてきやがった。
俺は間一髪の所で見事に華麗に避けてみせた……がしかし、俺の後ろには愛が、危ない愛避けるんだ!! ……死ぬな!!
……心配するまでもなかった。スピーカーは愛に当たる寸前、謎の黒子によってチョップで叩き落とされた。黒子は地面に落ちたスピーカーを回収するとどこかに消えて行った。実に環境のことを考えている……じゃないだろ、今の黒子は何者だ!!
いや、今はそんなことより、そんなことより、なんか変だ!! 何だか気温が低くなった。
俺は愛の方を振り向いた。……そこにはいつもと何ら変わらぬ表情をしている愛が立っている。がしかし、気温は低い。
俺’もそれを感じ取り、明らかに強張った表情をしている。
「ま、愛、愛に当てようと思ったわけじゃないぞ、直樹♂が避けるのがいけないのだ」
「諦めろ俺’、愛はキレているぞ」
愛は無表情のまま俺’にじりじりと詰め寄って行く。
「だ、だから、直樹♂が避けたのがいけないんだって言ってるでしょ!!」
さらばだ俺’、愛に喧嘩を売ったのが運の尽きだったな。
がしかし、展開は、運命の女神は俺の予想を裏切った。
俺’はポケットから、昔のSFに出てきそうなファンシーな光線銃らしき物を取り出して、愛に向けたではないか!?
「何する気だよ俺’!!」
俺は大声で叫んだ。
俺’は不適な笑みを浮かべた。
「これが切る札だ!!」
そう言いながら俺’は光線銃の引き金を引いた。
光線銃の先から、ポロロ〜ンって感じのリング状の光線がいくつも出て愛の身体にヒットした。
近距離だったため、黒子たちも成す術がなかった。そして俺も成す術がなかった。無力だ!!
謎の光線の直撃をくらった愛だったが外的損傷は無い、じゃあ何がある?
ここで、俺’の説明くさい言葉が入る。
「説明しよう、この光線銃の名は『今日の友は明日の敵銃』、この光線の光を浴びた者は誰でも私の配下になってしまうという妖孤先生の発明品だ」
それはすっげえ発明だ。さすがは玉藻先生、って関心してる場合じゃないだろ。それが本当だったら世界中の人たちぜーんぶ奴の配下になっちゃうじゃん。
くそ〜、こうなったら俺がやるしかない!!
俺は光線銃を壊すべく俺’に襲いかかろうとした。がしかし、ここで思わぬ強敵出現!
愛が俺の行く手を阻んだ。
「すまんな直樹」
そう言って愛は俺の腹にボディブローを……重たい良いパンチだ。
「愛……おまえ肉弾戦もいけるのか……ぐふっ」
俺はそう言って意識を失った――。
私は直樹♂を捕らえて愛と一緒に隠れ家に戻って来た。
「ナオキちゃん、おかえり〜」
家に着いた私を妖孤先生が明るく迎えてくれた。
愛は辺りを見回し私の顔を見て聞いていた。
「ここが玉藻先生のご自宅か?」
「そうだ」
そう、私が隠れ家として使っている家は妖孤先生の家だったりした。そのことはここに来る途中、愛に話しておいた。
私は辺りを見回してタロウくん1号2号を探した。――おぉ、いたいた。
「タロウくん1号2号、直樹♂を地下牢に閉じ込めておいてくれ」
タロウくん1号2号は直樹♂を抱えて階段を下りていった。働き者でよろしい。
さて、これからどうするかだ。取り合えずティータイムにでもするか。いや、時間的に昼食か。
「妖孤先生、愛、昼食にしよう」
私たち三人は、昼食を取るべくリビングに行きテーブルに付いた。
料理は程なくして、妖孤先生発明のコックさんロボット『あっという間にコックさん』があっという間に運んで来てくれた。
今回のメニューはイタリアンのパスタ中心だった。確か朝食は日本食だったな。
取り合えず私がスパゲッティをくるくるとやろうかなと思っていたら愛が私に質問をしてきた。
「どうして、直樹を殺さなかったんだ? 殺そうとしていたのだろ?」
良い質問だ愛。それはだなつまりこういうことだ。
「たしかに当初の作戦では直樹♂を殺す予定だった。しかし……」
「しかし、直樹を殺すとナオキちゃんが死ぬんじゃないかっていう仮説を私が立てたのよぉん」
妖孤先生に私のセリフを取られた。泥棒猫!! もとい、泥棒狐!!
「そういう事だ。だから私は直樹♂を殺せない」
「じゃあ、直樹を捕まえてどうする気だ?」
そう、その質問を待っていた。ナイスだ愛。
「私と直樹♂は一つになる」
この言葉を聞いた愛は驚きの表情を浮かべた。
「ふふ、驚いたようね、愛ちゃん」
この計画を最初に言い出した玉藻先生は愛の表情を見て満足そうな笑みを浮かべた。愛を驚かしたのがそんなにうれしいのか?
愛は直ぐに通常モードに戻って質問をしてきた。
「なぜ、一つに戻る必要がある?」
「私と直樹♂は一つの者だった。それが二つに?分かれた?。分身じゃないあくまで?分かれた?んだ。だから今の私は完璧ではない」
妖孤先生がグラタンを食べながら言う。
「だからわたしはナオキちゃんに提案したのよ。ナオキちゃんをベースに一人に戻ったらって?」
私はカルボナーラを食べながら言う。
「私はそれに同意した。だから直樹♂を生け捕りにしてここまで連れて来たのだ」
愛はミラノ風ピッツァを食べながら言う。ちなみにどこがミラノ風なのか私にはわからない。
「一つになるということはあの直樹は消えてしまうということか?」
妖孤先生はシーフードサラダを食べながら言う。
「そういうことになるかしらぁん」
私は紅茶を飲みながら言う。
「食べ終わってから話さないか?」
二人は頷き、私を含めた3人はもくもくと料理を食べた。
……またって感じだが、ここはどこだ!!
暗くて狭い部屋、そして、鉄格子……牢屋かっ!!
なぜ、俺がここにいるのかは検討が付く、だが、ここはどこだ!!
俺が辺りを見回すと、ちょうどいいところにタロウくん1号がいた。ちなみに彼らのねずみ色ボディには大きく黒い文字で『壱』とか『弐』とか書いてあるのですぐに識別がつく。
「あのさぁタロウくん1号、ここどこだか教えてくれない?」
タロウくん1号はいかにもロボットですよって声ですぐに答えてくれた。
作品名:ツイン’ズ 作家名:秋月あきら(秋月瑛)