小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

ツイン’ズ

INDEX|12ページ/30ページ|

次のページ前のページ
 

05_愛の心


 真ちゃんの一言で我に返った愛は、辺りを見回し玉藻先生を探している。俺も一緒になって辺りを見回すが見つからない……てゆーか逃げ足が速いな。
 愛は唇を噛み締め少し悔しそうな表情をしている。……その表情、何か妙に色っぽいぞ愛! ……じゃなかった、今はそんなことよりも玉藻先生を見つけなくてはいけない、それが俺の使命だ!!
 と勝手に燃えている俺に校内放送が水を注しやがった。
《本日の学校の授業は中止となりましたので、生徒の皆様は速やかに下校しましょう》
 この放送が流れた瞬間、大半の生徒たちが喜びの歓声を上げた。なぜって、みんな学校めんどいんでしょ、たぶん。
 放送が流れた後、すぐに真ちゃんと椎凪がどこに行こうした。それを確認した俺は二人に声をかける。
「どこ行くんだよ?」
 椎凪が髪の毛をふわりとかき上げながら答えた。
「今の放送聞いたでしょ、帰るんだよ」
「あの、僕も帰ろうかと思って」
 なんだと二人とも、この緊急事態に生徒会役員が帰ってどうする、学校はどうなる、俺らの使命は、誇りは……何てこと俺も思ってないけど、会議まだ終わってないわけだし。ねぇ?
 愛は帰ろうとした二人を見つめてこう言った。
「……おつかれ」
 これは『さよなら』を意味する言葉である。すなわち愛は二人が帰宅することを許可したわけだ。で許可を得た二人はそそくさと帰って行った。……俺も帰りたいんですけど?
 愛は俺のことを見つめ低い声で、ちょっと極道の女風に俺に聞いてきた。
「直樹はどうする?」
 この質問は要するに『帰るのか?』という意味だ……普通は。だが今の『帰るのか?』は=『お前も帰るんじゃないだろうな?』と脅しをかけていると俺は解釈した。要するに、『まだ仕事が残ってるから帰るな!』ということなのだろう。それを確認するために俺は宙の方を向くと、宙は小さくコクリと首を曲げた。宙は俺の心を読んでちゃんと頷いてくれたようだ。
 そして、俺はさりげな〜く、
「まだ、仕事残ってるし俺は残るけど愛も残るだろ?」
「当たり前だ」
 愛の表情が少し和らいだ良かった。……と思った瞬間、宙のヤローがとんでもない一言を抜かしやがった。
「……ワタシは帰る」
図ったな宙!!(ガン○ム風に)。てゆーか、俺一人を残して自分は帰るって寸法か!!
二人とも帰るとマズイから俺を生贄に捧げたわけだな!!
「……ごめんね愛」
 こう言った宙の瞳は少し潤んだ今にも泣き出しそうな表情で愛を見つめている。……作戦だ。作戦に違いない。しかも、その作戦に愛は見事に引っかかってるし。
「案ずるな宙、後のことは私と直樹に任せて早く帰れ」
「……ぁりがとぅ愛」
 そう言い残して宙は逃げやがった。……ふっ、とんだ茶番だぜみたいな。
 さて、残ったのは俺と愛だけだ。――これから何をするかが問題だ。まぁ普通に考えて、先生たちの所に行って今後の予定について話して、玉藻先生を取っ捕まえて、いろんなことを白状させて、それから……。
「何してるんだ早く行くぞ」
 俺が試行錯誤してると愛のお声がかかった。で気付いたらもうだいぶ前を歩いてたりして。
「どこ行くんだ?」
「先生方の所だ」
 やっぱ考えることは一緒か。フィーリングカップルって感じだな。何が?
 教職員たちはあれやこれやと会議をしていた。
 その場に俺たちが入って行くと直ぐに静かになった。これは愛の力だ、愛のバックにある権力の力と言った方が正しいかもしれないが……お金って恐い。
 愛は辺りを見回して誰かを探している。たぶん玉藻先生のことを探しているんだけど、いないみたいだねぇ〜。こういう時はこの人に聞け、玉藻先生研究の第一人者(いつからだ!?)の古典教師の聖明先生に聞くのがいいと思うってことで俺は聖明先生に近づき聞いてみた。
「あの、玉藻先生はどうしたんですか?」
「玉藻先生なら腹痛で帰られましたよ。私の術が効いたみたいですね、ククッ」
 地味な攻撃だなぁ〜。じゃなくって、この言葉を俺の横で聞いていた愛の表情が明らかに恐い、かる〜くキレてるに違いない。が彼女は決してキレても大声で怒鳴ったり、周りに当たったりはしない、ただちょっと回りの空気が冷たくなるだけ……それが凄く恐い。
 この後、俺らは職員会議に参加して、あれこれ今後の日程や連絡網の内容とかを決めることになった。その間ここを仕切っていたのは愛だった。教職員を差し置いて一生徒がこの場を仕切るのは少し変だと思われるかもしれないが、この学校の生徒会の権力は凄まじいものがある、まぁ愛の力なんだけど。
 この学校で一番の権力者は学園長で次が愛、だけどこの場には学園長はいない、てゆーかいつもいない、顔なんて一度も見たことないしみたいな、かなり謎な人物でうちの学校七不思議の一つなんだよな。で学園長の変わりに愛がここを仕切ってるってわけ。
 会議は1時間ほどで終わった、長かった。だって俺やることなかったし、ただずーっとぼーっとじーっとしてただけだから。
 会議が終わると直ぐに次の仕事、『玉藻先生探し』が待っていた。が直ぐに行き詰まった。人生はこんなもんさ。
「直樹、玉藻先生の家知っているか?」
「知らない、だけどさぁ教員名簿とかで調べればわかるんじゃないの?」
「さっき、調べようとしたが玉藻に関する資料が一切なかった」
 さすが愛、仕事が速いなっていうか、資料がないってどういうことだよ、教員名簿とかに住所書いてないわけ?
「どういうことだよ?」
「さぁな、トップシークレットなのかもな」
「……この学校ならありえる」
 『トップシークレット』この学校なら十分ありえる話だ。この学校は秘密多いし、教職員みんな変だし、学園長は謎の人だし、危ない噂もよく耳にするし、障らぬ神に祟り無しってこともある。
「で、どうやって見つけるの?」
「私に考えがある」
 そう言って愛はポケットからケータイを取り出しどこかに電話をかけた。
「…私だが…うちの学校の玉藻を見つけ出して欲しい…あぁ…」
 愛はケータイのボタンを押してポケットに戻した。いったい愛はどこに電話かけてたんだ、気になる。
「少し、時間がかかると思うから近くのファミレスでも行くとするか?」
 学校近くにあるファミレスは俺らの行きつけだ。時間をつぶしたり話をするのにちょうどいい。金持ちの愛がファミレス!? と思うかもしれないがファミレスに行かない方が変だと愛は言う。愛いわくだが、『普通に友達と付き合ってればファミレスとかゲーセンに行ったするのが必然だろ?』ってことらしい、普通の高校生の友達と付き合う上で一緒に帰りに高級レストラン行こうっていう方が確かに変だけどな。
 ……じゃなくって、
「愛どこに電話かけてたんだ?」
「私の家で雇っている特殊部隊だ」
「ふ〜ん」
 俺は『ふ〜ん』としか答えられなかった。だって特殊部隊を家で雇ってるって話がズバ抜けて空の上の話だろ、そんな感覚わかんねぇーよって感じだよ、一般高校生には。
 あぁそうだった、ファミレス行くんだった。
「ちょっと待ってて自転車取って来っから」
「私も行く」
 俺と愛は自転車置き場に行って俺の愛車を取りに行った。
「直樹は何で私と友達になったんだ?」