【無幻真天楼 第二部・第一回・弐】しっぽの気持ち
「あ矜羯羅様、制多迦様」
玄関から入ってきた制多迦と矜羯羅が名前を呼ばれて立ち止まると慧光が駆け寄ってきた
「どこにいってらしたナリか?」
「涼しいところ」
歩きながら矜羯羅が答える
「涼しいところ…ナリか?」
「…ん」
制多迦がヘラリ笑う
「もう涼しくなったナリ?」
「まだ暑いけど…」
まだ暑い といいながら矜羯羅が縁側がある和室に入ると空を見上げた
庭には緊那羅が干した洗濯物が風に揺れている
「矜羯羅様?」
慧光があとからやってきて同じく空を見上げた
少し雲が多くなった空
心なしか風も強くなってきたような
チリンチリンと風鈴が小刻みに鳴る
「あー!!;」
どこからか聞こえたのは緊那羅の声
「洗濯物っ;」
地面にポツポツとシミができていく
小走りでやってきた緊那羅がわたわたと洗濯物を腕にとりはじめた
「私手伝ってくるナリ」
庭に降りた慧光が緊那羅に駆け寄る
「しょうがないね…」
ため息をついた矜羯羅も庭に降りた
「…クロはおいてきなよ?」
一緒に行こうとした制多迦に矜羯羅が言うと頭の上のクロを縁側に下ろした
作品名:【無幻真天楼 第二部・第一回・弐】しっぽの気持ち 作家名:島原あゆむ