【無幻真天楼 第二部・第一回・弐】しっぽの気持ち
阿の声がしたかと思うと烏倶婆迦の指に阿がぶら下がっていた
一瞬何が起こったのかわからなかった緊那羅たち
じわじわと痛みを烏倶婆迦が感じだして
「ぅっ…え…」
烏倶婆迦の指を放して阿が着地する
じわっと烏倶婆迦の指から血が出てきた
「烏倶婆迦っ;」
慌てる緊那羅と慧光
「痛い…っ…痛いぃっ」
表情変わらぬお面の烏倶婆迦から鳴き声が上がった
「大丈夫あるか分」
「大丈夫ある」
阿が緊那羅の肩の上の分に言う
「烏倶婆迦!!;」
慧光が血の流れる烏倶婆迦の指に手を翳した
「どうしてかじったっちゃっ!!」
緊那羅が阿に聞く
「こいつ空ある。空は敵ある」
「でも制多迦は我ら撫でたある」
答えた阿に分が言った
「烏倶婆迦は何もしてないっちゃ !謝るっちゃっ」
しゃがんで緊那羅が阿に言う
「先手必勝ある」
ふいっと阿が向きを変えて歩き出した
「阿っ!!」
緊那羅が阿を呼ぶ
「ごめんある」
阿に代わってなのか分が謝ると緊那羅の肩からぴょんと降りて阿を追いかけていった
えっえっと泣きしゃっくりをあげているお面の顔
だがさっきまで血が流れていた指には傷はなく
「まだ痛いナリか?」
聞いた慧光に首を振って返した烏倶婆迦に慧光が微笑んだ
何だかんだ賢そうに偉そうな態度をしてもまだまだお子様な烏倶婆迦を見て緊那羅も微笑む
「大丈夫だっちゃ?」
「…うん…大丈夫ありがと慧光」
泣きしゃっくりもだいぶ落ち着いた烏倶婆迦が慧光にお礼を言った
「にしても…すごく敵視してるっちゃね…あの二匹…特に阿の方」
緊那羅がため息をついた
「今まで【天】と【空】がこんなに近くにいたことなんてないから仕方ないかもしれないナリ…」
「今までにないからおいちゃんかじられたの?」
慧光が呟くと烏倶婆迦が慧光と緊那羅を見上げた
作品名:【無幻真天楼 第二部・第一回・弐】しっぽの気持ち 作家名:島原あゆむ