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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第二部・第一回・弐】しっぽの気持ち

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制多迦の笑顔
守りたかったもの
まだ目の前にある
でもいつかは

「…くがいるから。僕が矜羯羅に優しくする」
「は…?」
制多迦が矜羯羅の頭を撫でながらヘラリと笑う
「…くが矜羯羅を守るから」
矜羯羅の頭のタオルがずれ落ちて肩に落ちた
「…っと側にいてくれてずっと見ていてくれたから僕知ってる」
いつも下がっている制多迦の眉が更に下がった
「…れかに優しくする度に矜羯羅苦しんでるって」
矜羯羅の目が大きくなった
「何…言って…」
「…んがらが矜羯羅に優しくできないなら僕が矜羯羅に優しくする」
制多迦が矜羯羅の手を握る
伝わる制多迦のぬくもり
手を繋ぐことなんか今までにも数えきれないくらいしたことなのに何故か凄く暖かい
自然と下がった矜羯羅の眉
今まで自分がしてきたことに対しての罪悪感
それが溶けていく気すら感じられた
「…んがら」
「何」
ヘラリではない笑顔の制多迦を見た矜羯羅の口元がゆっくり微笑む
「…へへっ」
「気持ち悪いよその笑い方」
声を出して笑った制多迦に矜羯羅が言った

「わかんねぇある…」
「我もある…」
濡れた体を拭いたために湿ったタオルの上で阿分が呟く
「制多迦…なんで撫でたある…?」
「矜羯羅…なんで我らを迎えに来たある…?」
「わかんねぇある…」
各々に言ったあと声を揃えた
「空は敵ある…」
「そうある…でも…でも前とはなにか違うある…」
「我も思うある…前に会った矜羯羅制多迦とはなにか違うあるよ…なにかはわかんねぇあるがなにか違うある…」
生乾きの尻尾が揺れる
「我らが知らねぇ間になにかがかわったあるか…?」
「…そうかも知れねぇある…」
「制多迦…手優しかったある」
「矜羯羅…暖かかったある…」
二匹がうつ向いた
「もやもやするあるな…」
「我もある…」
少し開いていたカーテンの隙間からぼんやりとした光が入ってきた
気づくといつの間にかあんなに激しかった雨や風は止んでいた