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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第二部・第一回・弐】しっぽの気持ち

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湯気の立つ湯船に浸かった矜羯羅
冷えた体には少し熱いようにも感じる
「…もいだすね」
「何が」
戸越しに聞こえた制多迦の声に矜羯羅が返した
「…かし…慧喜と慧光を矜羯羅がつれてきたときのこと」
「…なにそれ」
「…の時も二人を羽衣に包んできてたじゃない?」
「忘れたよ…」

忘れてない
初めてあの二人を見たときのこと
矜羯羅が目を閉じた
藤色と黄緑の瞳と目があった
藤色の瞳は鋭くにらみをきかせていて
黄緑の瞳は怯えていた
側にいるべき両親の姿はなく
真っ白な衣から出ていた手足には無数の傷や痣があった
「…名前は?」
矜羯羅が問いかけるとびくっと身をすくめる二人
「名はと矜羯羅様が問われているだろう」
二人をつれてきたらしい男か強く言った
「ひっ…」
黄緑の瞳が小さく声を出すと藤色の瞳が男を睨んだ

少しだけど話は聞いていた
宝珠が選んだ双子
二人同時に選ばれたことは今までになく
多少ながら興味があってここに出向いたのは自分から
【空】では忌み嫌われる宝珠の力
妬みの的となったであろう二つの小さな体
矜羯羅が足を進めて近づくと藤色の瞳が黄緑の瞳をかばうように背中にかくまうと矜羯羅を睨みながら見上げた
二人の前で足を止めた矜羯羅がしゃがんだ