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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第二部・第一回・弐】しっぽの気持ち

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「…んがらみっけ」
縁側に立っていた後ろ姿を見つけた制多迦が嬉しそうに駆け寄ったのは矜羯羅の隣
「…はんだってハルミママさんが」
「…そう」
ガラス窓越しに少し開けている雨戸から何処かを見ている矜羯羅に首を傾げた制多迦が矜羯羅と同じように外を見た
強風に揺れる庭の木々
雨でぼやける街灯の光が見える
「…に見てたの?」
「…別に…」
ふいっと矜羯羅が向きを変えて歩き出す
「…んがら?」
きょとんとした制多迦がもう一度外を見た
「おいてくよ」
「…って;」
制多迦慌てて矜羯羅を追いかけた

「やっぱりまだまだ俺にはかなわないな」
「なにがだ;」
「聞きたいか?」
「…いやいい;」
薄暗い廊下を歩く風呂上がりの竜之助と京助
「誰かを好きになることは簡単そうで難しい…好きになってからはもっと簡単で難しくなるぞ京助」
「…わけわからん;」
「ハッハッハ。そのうちわかる」

自分より大きく広い背中
父親の背中
どちらかといえばたくましいよりは細マッチョな部類にはいるであろう父竜之助の背中
「京助」
竜之助が足を止めた
「ありがとうな」
「へ…?」
いきなりお礼を言った竜之助にきょとんとする京助
「俺の分まで頑張ってくれてたんだろう?」
「…別に」

父親がいない分長男の自分が
お兄ちゃんだから長男の自分が
それがずっと当たり前だった

「…緊那羅は凄いな」
竜之助が振り返り笑う
「緊那羅はお前の居場所になっているな」
「居場所…?」
「安心するだろう緊那羅がいると」
「…わからん」
口ではそう答えた京助
でも頭の中ではたぶん大きく頷いていた
「それが好きってことだ京助」
「それってどれだよ; あーもー…腹減ったから先いくかんなっ;」
大股で歩き出した京助が竜之助を追い越し角を曲がった
「まだまだ…子供だな」
ククッと笑った竜之助も歩き出す