タクシー強盗の恐怖
「二十三足す二十二は?」
「……四十五です」
今井が奪われた金を、千円紙幣にしたときの枚数らしい。
「……そういうことだ。お前、パチスロはやるのか?」
「だめです。目がまわります」
「そうか。あれはやめたほうがいい」
急に空が明るくなった。幹線道路に入った。大型トレーラーなどが多く、渋滞気味になっている。
「お前、嘘つきじゃないな」
「嘘はすぐにバレます」
「正直というか、結構まともな奴なんだなぁ。タクシーの運転手なんて、ろくな奴はいないと思ってたけどよ」
次第に緊張感がほぐれ始めた。
「私はかみさんに逃げられた半端者です。子供もなくて寂しい一人暮らしですよ」