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タクシー強盗の恐怖

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 急に思い出した。アパートに帰れば何かの本に挟んでおいた二万円がある。それを忘れていたのだった。それは、飼い猫の避妊手術のために使わないで取っておいた金だった。
「俺もな、実はそうなんだ。逃げられちまったんだ」
「……お子さんは?」
「いない……今井亮太か。両親は元気なのか?」
 強盗は今井の乗務員証を見ながら云ったようだ。
「両方死んだので、家族は猫だけです」
「猫だって?こっちもそうだぜ」
「……」
「兄弟はいねえ。猫と暮らしてるんだ。三毛猫を拾ってよう。犬は嫌いだけど猫は嫌いじゃねえ」
「同じですね」
「何が?」