タクシー強盗の恐怖
「そうか。立ち会うから、ドアを開けろ」
トランクのロックを外してから、彼はキャッシュカードを取りに行った。ナイフを持っている強盗がトランクを開けて待っていた。今井よりも背が高く、体格もいい。そして、乗車したときよりも凶暴さを感じさせる迫力のある顔をもう一度見てしまった。
乗務員は水の中を歩く感覚で、光芒を目指した。相変わらず今井の全身は慄えている。
どうしたことか、店内に従業員の姿がない。奥で休憩をしているらしいのだ。天井のスピーカーからの音楽が聞こえているのだが、今井は恐怖のために一連のメロディーとしてそれを把握できない。
コンビニの現金払い出し機は、カードを挿入してもすぐには反応しなかった。今井は苛立った。漸く液晶画面が明るくなったとき、彼は暗証番号を間違え、更に苛立ちをつのらせる。外を伺ったが、強盗の姿は見えなかった。漸く二万数千円を引き出して屋外へ出た。
冷たい風が頬を打った。車の屋根の行灯は緑色のままだった。紅く点滅していたら強盗に刺されたかも知れないと、今井は肝を冷やした。