タクシー強盗の恐怖
手元の暗闇の中で、手探りでそれを動かすことになる。その行動を、強盗に見破られることはないだろうか。一般の人物はそのスイッチを知らない筈だ。だが、強盗に悟られないように、それを実行できるだろうか。
最初の交番には警察官の姿がなくて今井は落胆した。恐らくその地区を巡回しているのだろう。間もなく明るい光を放射しているコンビニが見えた。
「おい。コンビニだ。店員に助けを求めるなよ。下手なことは云わずにさっさと出せる限度額を出して来い。俺は顔を見られたくないからな、お前一人で行け。戻ったら金と一緒に明細書も俺に渡せ。それから後ろのドアは開けて行け。俺を甘く見るなよ。逃げようとしたら追っかけて刺し殺すからな。こっちは足が速いんだ。絶対に逃げ切れないぞ!」
その必要以上の明るさに接近するまでの、見え始めてからの距離が途方もなく長かった。今井は一縷の希望どころか、大きな期待感を抱いている。
やっとたどり着いたコンビニの前で、今井は車を停止させた。
「キャッシュカードはトランクの荷物の中です。出してから行きます」
それは何の作戦でもなく、事実だった。