「レイコの青春」 34~36
「親からの、おしきせのような生き方に反発をして、
ボーリング場へ入り浸るようになったのは、私が18になった頃だった。
それからは私を取り巻く環境が一変して、急激に動き始めたわ。
男たちが、とにかく次から次にと寄ってきた。
仕事が終わったあとには、真夜中の海へ、車で暴走したこともよくあった。
・・・でも、誤解はしないでょ、レイコ。
遊び回ったのは事実だけど、貞操だけは、しっかりと守ったわ。
そういうのが目的で、甘い言葉で言い寄ってくる男はたくさんいたけど
全部まとめて、却下してやりました。
あの頃は・・・」
「あの頃は・・?」
「若い男たちなんか、それだけが目当てなのよ。
子供や家庭が欲しいわけではなく、ただ女の子と遊びたいだけなのよ。
それが解っていたというくせに、
結局、私自身も遊び始めてしまったの・・・
成人式の前にはもう、最初の子、翔太が生まれていたの。
自分ではしっかりしているつもりでも、
節操のない暴走や遊びに慣れ過ぎて、
堕落するまでが、けっこう早かったということかしら。
その先に待っていたのは、
世間でもお決まりの、転落コースそのものだった。」
「そうなんだ。
美千子にとって、お仕事で水商売の世界へ入ったということは、
あなたの人生そのものが、すでに
転落コースへ落ちてしまった、という意味になるわけね。」
「本当に・・・
言いにくい事を、遠慮もせずに、
はっきりという娘だわねぇ、レイコって。
手っとり早く、女が大金を稼ぐためには水商売の世界が、
最適だったという意味なのよ。」
「大金が必要だった訳なのね、でもなんのために?」
「いちいち気に障るわねぇ、レイコのその聞き方は。
あんたって、ほんとは、優しくない女でしょ、本性は。
暴走するための車や、若いものたちが夜遊びにふけるためには
それ相当のお金がかかるものなの。
これはと思って一緒になった、最初の旦那も、
一皮むいたら、とんでもない遊び人だった。
言われるままにお金を都合していていたら、いつのまにか、
どっぷりと水商売の世界に浸かってたわ。
でもそいつときたらは、夜明けに、別の女を車に乗せて、
つまらない交通事故に巻きこまれて、あたしと翔太を残して、
あっというまに死んじゃった・・・
それが、あたしの最初の男だった。」
作品名:「レイコの青春」 34~36 作家名:落合順平