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海野ごはん
海野ごはん
novelistID. 29750
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夜が一番短い日

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「昔の男は今刑務所。ずっと出られないんだって・・・」
「えっ!嘘だろ。元カレってヤクザ?」
「そう・・・だったらどうする? やっぱり退くよね・・・」洋子は少し笑いながら言った。
「また、また~・・・笑ってるから嘘だろ?」
「・・・・ばれた?へへっ・・・」
「あぁ~、ちょっとびっくりした」義男はヤクザにビビった自分に少し照れた。

「本当はね・・・もう死んじゃった。いないの・・・」
洋子は今度は真剣な顔つきで前を向いたまま、小さく言った。
「・・・・・」
「好きだったけど最後はフラれちゃった・・・」
「なんで死んだんだ、そいつ・・・」
「事故・・・」また小さく洋子は言った。
「・・・そうか・・・聞いて悪かったな・・・・」
 なんとなく重苦しい雰囲気の中、相変わらず天井のスピーカーはラブソングが流れていた。義男はベッドの枕元にある有線のスイッチを切ると、そばにあったバスタオルを腰に巻き立ち上がり、ベッドを降りて窓の方へ歩いた。そして大きな窓の横にあるスイッチを押すとブーンと低い機械の音が鳴り、大きな窓のカーテンが自動的に開き始めた。
 宿泊した海のそばのラブホテルは湾内をまたぐ大きな橋が目の前にあった。義男が開け放した窓からはその大きな橋が闇夜の空に浮かんでいた。橋をデコレーションする照明が赤く照らし、暗い海の上にそこだけが目立っていた。岸壁には人影もなく、小さな常夜灯だけが細々と点いていた。

「死んだ男に嫉妬心は燃やせねぇなぁ~・・・」義男はひとり言のように小さく言うと、また備え付けの冷蔵庫の方に向かって二本目の缶ビールを引き抜いた。

「なぁ~、洋子・・・時々、そいつ思い出すのか?」
 窓に向かい外を見ながら義男はちょっと大きな声で洋子に聞こえるように聞いてみた。
「・・・もう、思い出さない・・・いや・・・思い出すよ・・・時々・・・」
「仕方ないよな・・・」
「ごめんね・・・でも、最近は義男ばっかり思ってるから・・・」
「いいんだ・・・比べたっていいぞ。どうせ、この世にいないんだから、戦いようがない」

作品名:夜が一番短い日 作家名:海野ごはん