夜が一番短い日
義男は冷たい缶ビールをシーツをかぶった洋子に勧めた。洋子は起き上がり義男から缶ビールを受け取ると、片手でシーツを引き上げ胸を隠しゴクリと大きく一口飲んだ。
「おいしぃ~」
「だよな、暴れた後はおいしい。俺にも」そう言うと義男は洋子から缶ビールを取り上げまた飲んだ。
それから口の中に入れた液体をわざと少し残し、洋子の方を向くとキスを求めた。苦い液体は義男の口から洋子の口へと伝わり、そして洋子の喉元へ流れた。
「おいしぃ~。こんな飲み方好きっ!」
「誰が教えたんだ?一本目の男か?」
「やだ、妬いてるの?あなただって、たくさんあるでしょ?」
「俺は超ヤキモチ妬きなんだ・・・厭な男だろ・・」
「いいよ・・・うれしい。妬かれないより嬉しい」
「どんな男だった?」
「なんでそんなに比べるのよ」
「今までたくさん大勢いたら、比べようがないけど、俺以外たった一人しかいないんだぜ。なんだか気になっちまう。お前を知ってるのは俺とそいつだけだろう。どんな奴なんだろうって対抗心が湧いてくる」
義男はわざとオーバーに嫉妬心を出してみた。本当の所は洋子が誰と経験しようが気にならなかった。いや多少は気にしてるのだが言葉ほど真剣さは持っていなかった。
「知りたい?私だったら知りたくないなぁ~・・・妬けるもん・・・」
「そうだよな、聞いたところで昔の事だもんな・・でも、気になる」
「言いたくない」
「そんなに言われるとますます気になる」
「フラれちゃったし、思い出したくない。ずっと昔の事だもん」
「なんだよ~、そんなの聞いたら知りたくなるじゃないか」
洋子は義男が飲んでいた缶ビールを取り上げると、さっきより多めにゴクリと黄色い液体を流し込んだ。そしてフゥ~とため息のような息を吐くと義男の顔を見ないで前を見ながら話しだした。