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「レイコの青春」 31~33

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 「やっと笑ってくれたわね。
 少し反則技だけど、やっぱり奥の手は効くわねぇ~、うふふ。
 美千子のハローキティちゃん好きは、とにかく有名だもの。
 いい大人になったというのに、
 いまだにキティちゃんにべったりだなんて、笑っちゃうわ。」



 答える代わりに、美千子の力の入っていないこぶしが
2度、3度とレイコの背中を叩きます。
その瞬間でした。


 周囲の木立ちを、突然の風が吹き抜けていきました。
激しく揺さぶられた木の枝からは、たくさんの水滴が落ちてきます。
舞い落ちてくる木の葉とともに、地面を激しく叩き始めました。
砕け散る水滴で、二人の足元は真っ白に変わります。
驚いたレイコが、傘を差し出したまま、これ以上はないほどに、
美千子の背中へ密着をしてしまいます。
あっというまの出来事でした。


 墓地を取り囲む老木たちから、すべての水滴をたたき落とした突風は、
さらに丘陵地の斜面を駆け下りていきます。
その先にある、雨雲の下で暗く沈んでいる市街地の中を
強い雨と風が駆け抜けていきました。