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最後の魔法使い 第五章 『再会』

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 ディディーが去ってから数日間ほど、アレンは驚くほど平穏に暮らすことができた。あの結界の中にさえいれば、火の魔法を使ってもドラゴンやアッパーに見つかることはなかったし、練習するとき以外は、ジュダの家の周りを手伝った。なにしろいたるところに古い本やノートが積まれており、書斎に至っては足を踏み入れることも困難だった(『箱』を返す際にアレンは書斎に入ったのだが、慎重に進まなければ本棚が真上に落ちてきそうなくらい、所狭しと本屋紙切れが並べられていた)。「君が触るとわからなくなる」と最初ジュダはぶつぶつ言っていたものの、いざいくらか片付くと、満足したようだった。とくにそれらしい行動をしたわけではないのだが、父親を知らずに育ったアレンにとって、ジュダという叔父の存在は新鮮で、またこれまでに感じたことがないほど、頼りに思えた。ジュダもまた、同居人ができたことがうれしいのか、毎日特製の料理をアレンにふるまった。ディディーはジュダの家に来ることはなかったが、ジュダが街に出向いた際に、例の『スープがもらえる店』の前で見かけたので、元気ではあるらしかった。
一方で、この生活がいつまでも続かないということは、アレンの頭から離れなかった。本来ならすぐにでもこの町から出て行きたかったのだが、そうアレンが言うたび、ジュダは『まだ時期じゃない』とたしなめるのだった。時期もなにも、アッパーが、アレンはここに居るとかぎ付けたら、それこそサウスを抜けて逃げ切れるはずはなかった。それに、いくらアレンが火の魔法を使えるようになったからと言って、二人とも―場合によってはロウア―サウスも―無事では済まないだろう。