【無幻真天楼 第二部・第一回】夢風鈴
「…まさかと思うが…」
「そのまさかだったりしてね」
迦楼羅と矜羯羅が悠助を見る
「主まで我らを忘れたあるか…」
分が呟くように言った
「沙汰様や迦楼羅様だけじゃなく主まで我らを忘れてしまったあるか」
阿も呟くように言った
「ごめんなさい…僕…」
悠助が2人に謝る
「おいちゃんの計算によると人間違いだとおもう」
乾闥婆を抱き締めたまま烏倶婆迦が言った
「俺もそう思う」
まだ寝癖頭のままの京助が和室に入ると阿分の側にしゃがむ
その京助を阿分がじっと見る
「…お前…」
「んだよ」
「主と同じ感じがするある…」
「懐かしい…ある」
阿分がぐすっと鼻を啜った
「とりあえず…朝飯食うか?」
京助が阿分に聞く
ぐぅ
「……」
和室に響いた腹の虫の声に一同が視線を向けたのは迦楼羅
「なっ…; し…仕方なかろうっ!!;」
「どこまでもお約束すぎるやっちゃなお前…;」
怒鳴った迦楼羅に京助が呆れて言う
「僕もお腹へったー」
「今緊那羅が母さんの手伝いしにいったからすぐできんじゃね?」
京助が立ち上がった
「僕も手伝ってこよーっと」
「俺もっ」
パタパタと駆け出した悠助の後を慧喜が追いかける
「僕らもいこうか」
「…うだね」
矜羯羅の言葉に制多迦が頷いた
「さって…来るもこないもいいけど俺もいくか」
伸びをした京助がちらっと阿分を見たあと和室を出ていった
「乾闥婆…」
烏倶婆迦が乾闥婆に声をかけるとふっと影が落ちた
見上げるとそこには迦楼羅
「…乾闥婆」
迦楼羅の声にぴくっと乾闥婆が動いた
「か…るら…」
ゆっくりと上げられた乾闥婆の顔は不安そうで今にも泣き出しそうで
「…大丈夫か…」
そんな乾闥婆の髪を迦楼羅が撫でた
「…はい…」
乾闥婆が頷く
「…そうか…」
迦楼羅が乾闥婆の頭から手を離すと
「…すまない…な」
小さく謝った
チリンと小さく風鈴が鳴った
作品名:【無幻真天楼 第二部・第一回】夢風鈴 作家名:島原あゆむ